義兄は私を嫌っている。Part2

第1話。 ページ28

夏休み最終日。

私は何故か海に来ていた。

「あんた、マジ？なんで水着もってないわけ？」

そう言って頭をぽりぽり掻くこの人と一緒に。

「だって私、泳ぐことなんてないから…」

そう、私は極度のカナヅチで学校のプールにすら入ったことがないのだ。

「しょうがないわね、じゃあこれ着て」

そう言って渡されたのはあやかさんの黒くてセクシーな水着。

「え、いいよ！私ここで海を眺めてるから…」

「ふーん、着替えないんだ。私を会場に残して散々探させた上に先に帰っていたくせに」

こんなの絶対に着られない。

私は脇腹をキュッと抑えた。

「仕方ないわね、じゃあこっちでいいよ」

あやかさんはそうため息をつくと袋の中からスクール水着を取り出した。

「これはこれで恥ずかし…」

「どっちにすんの？」

私はその圧に負けて渋々スクール水着を手に取った。

これならギリギリ大丈夫…だよね？





私は水着に着替えて上着を取るためにロッカーに戻る。

「え、なんで？鍵がささってない…」

私、鍵なんてかけてないのに。

………………。

まさか…。

しばらく頭をフル回転させて考えた結果、絶対にあやかさんが仕組んだ事だと理解した。

私はもう一度洗面所に行き自分の姿を確認する。

うん、無理だ。

この姿でビーチを徘徊するのはまずい。

でも出てあやかさんを探さなければこの姿のままここに取り残される。

足の速さにはそこそこ自信あるし、鍵を取り返したらダッシュでここに戻ってこよう。

私はそう決心して脱衣所から恐る恐る出ることにした。




痛い。

視線が痛すぎる。

なんで私がこんな公開処刑を受けなければならないのだろううか。

あやかさん…会場に置いていったこと相当怒ってるんだろうな。

ちゃんと謝って鍵を返してもらおう。




「なに…してんの？」

脱衣所を出てしばらくあやかさんを探していると、かき氷を持った田ノ浦くんと遭遇した。

田ノ浦くん、すごく驚いてる。

それもそうか。

こんなところで振った元カノと会うなんて思ってもなかっただろうし。

私は何も言わずに下を向いて通り過ぎる。

「待って」

そう言って私の腕を掴んだ彼の手はかき氷の所為かヒンヤリ冷たい。

「なん…ですか？」

田ノ浦くん…

決勝戦以来久しぶりにみた。

「敬語に戻るんだ」

なんでそんな顔するの？

振ったのは貴方の方でしょう？


久しぶりにあった彼の顔はやっぱり悔しいくらいカッコよくて胸がキュンと締め付けられた

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