義兄は私を嫌っている。Part2

第7話。 ページ20

私、どうやってここまで歩いてきたっけ？

あ、そういえば…あやかさんに何も言わずに勝手に帰ってきちゃった。

なんかもう…どうだっていいや。




「あ、こんにちわ…」

私が家の前に着くと、ひとりの女の人が声をかけてきた。

誰だろう？

「こんにちわ…」

私はそんな疑問を抱きながらも女の人に挨拶を返した。

でもこの顔…どこかで見た気がするけど…

「私、シンくんと同じクラスの佐々木咲良です。失礼ですが、シンくんはご在宅でしょうか？」

丁寧で真面目そうな口調。

やっぱり似てる。

でも誰だっけ？

今は田ノ浦くんのことで頭がいっぱいで何も考えられない。

「すみません、お兄ちゃんはしばらく帰ってきてなくて…」

「そうですか…じゃあ、これ。シンくんの夏休みの宿題です。」

女の人はそう言うと私に紙袋を渡した。

夏休みの宿題って…

もう、あと少しで終わりますけど…

「すみません、私も係の仕事で教室に行って気づいたものですから…」

女の人は私の心の中を察したのか、そう言って頭を下げた。

本当に丁寧な人だな…

真面目すぎて、シンお兄ちゃんとは全然関わりが無さそうなのに。

「では、私はこれで。」

そう言うと彼女は最後にもう一度深々と頭を下げて帰っていった。

結局、最後まで思い出せなかったな…

まぁ、いいか…



とりあえず、横になりたい。

何も考えたくない。

私はリビングのテーブルに受け取った紙袋を置いて部屋に戻った。




ほら、いつものように頭を真っ白にして目を閉じて。



悪夢を見るかもしれないけど、



今よりはきっと、苦しくないから…

＊第4章。(咲良)→←第6話。

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