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第6話。 ページ35

この家、昨日ぶりだな。

俺は渡辺と書いた表札の前で一息つく。

来たのはいいけど何を話す?

その前に、ちゃんと彼女に会えるのか?

やっぱ、手土産持って来た方がよかったのだろうか。

そんなこんなで悩んでいると、

「うちになんか用?」

と後ろから声が聞こえた。

俺は反射的に後ろを振り返る。

あ、この人は…

「こんばんわ、俺…渡辺さんの同級生で田ノ浦と言います。」

「あぁ…あの田ノ浦くんね。俺は兄のシンです。」

もちろん知ってますとも。

なんかデジャブだな、この会話。

シン先輩は俺とギリギリ中学被ったからな。

貴方のせいで学校男子イケメンランキング2位になっちゃったんですから。

まぁ、そんなことどうでもいいんだけど。

「で、田ノ浦くんはうちに何しに来たわけ?」

そう言ってシン先輩は背中に背負っていたベースを地面に下ろす。

「渡辺さん…います?」

「A?」

俺が彼女の名前を口にした途端、シン先輩の表情が明らかに変わった。

「何あんた、Aと付き合ってんの?」

なんだこの威圧感…

昨日も思ったけど彼女の兄貴…2人ともどこか変だ。

「いや…付き合ってはないです」

「…そっか、でも妹は多分会いたがらないと思うよ」

シン先輩はまたさっき地面に置いたばかりのベースを背負い直した。

この行動からすると今日はもう会わせてくれないんだろうな。

でも1つわかった。

彼女はちゃんとこの家にいる。

俺はぐるりと家の周りを見て回る。

って俺、彼女のストーカーかよ。

別にそう思われてもいいか…

君を一目だけでも見れたらちゃんと帰るから。



あ…いた。

やっと見つけた。

彼女は二階の窓から空をじっと眺めていた。

頬を手で拭いている仕草から泣いていることは確実だな。

ほんと、泣き虫。

一目見たらすぐに帰るはずだったのに、君が泣いているせいで抱きしめたくなったじゃねぇか。

俺はバックをゴソゴソと探る。

あったあった。

女子から無理やり貰ったお菓子の詰め合わせも、たまには役に立つんだな。

俺はその袋を開けて飴玉を取り出す。

顔に当たんねぇようにしねぇとな。

俺は一息ついて飴玉を彼女に投げた。

お、ヒットした。

俺が投げた飴玉は綺麗に彼女の頭に当たった。

彼女はそれにびくりと反応し、辺りを見渡す。

早く俺に気づけ。

早く俺の方を見ろ。

そう願っていると彼女はやっと俺を見つけた。

おせぇよ、ばーか。

俺は笑顔で手を振る彼女を見て、心から愛おしいと思った。

*第6章→←第5話。



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まなか(プロフ) - はじめまして。すごくおもしろいです、全て読ませていただきましたが話がとても深く、とても感情移入してしまいました。更新等頑張ってください。楽しみにしてます (2021年1月12日 22時) (レス) id: 55942c365e (このIDを非表示/違反報告)
彩波 - 面白いです!!!! もう感動して泣きましたよー!! part 2も頑張ってください! (2019年2月16日 6時) (レス) id: 6f464ca19c (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - 魅月さん» ありがとうございます!!そのコメントに元気をもらいました!! Part2の方もどうぞよろしくお願いします! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - 匿名でいたいさん» うずうずさせてしまってすみません!笑笑 Part2できました^_^ Part2の方でもうずうずさせない程度に頑張りますのでよろしくお願いします! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - ゆうあさん» コメントありがとうございます!夢主が幸せになれるよう最後まで見守ってください^_^これからもコメントお待ちしております! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まりあ | 作成日時:2018年4月20日 4時

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