検索窓
今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:1,197,303 hit

第2話。 ページ31

別に俺は、彼女に答えを求めていたわけじゃない。

なのに、彼女は俺からすぐに離れて電車から降りてしまった。

いつものように唇を震わせて泣きながら。

その涙の理由も言わずに。

「…ふざけんな」

もう嫌なんだ。

君の泣き顔をただただ見ている自分も、俺から逃げ続ける君の手を離すのも。

「待てよ!」

俺は閉まる直前の電車から飛び降り、彼女を追いかけた。

彼女はそんな俺を見るなりすぐに走り出す。

バーカ。

こっちはバリバリ現役のエース様だぞ?

追いかけっこで俺から逃げられると思うなよ。



「捕まえた」

俺は、まだ逃げようとする彼女を後ろから強く抱きしめた。

「離して…っ」

「だーめ!そしたら、また逃げるでしょ?」

「人が見てるから…」

彼女はそう言うと恥ずかしそうに顔を下げた。

「じゃあ、逃げないって約束する?」

「するっ!するから!」

俺はその返事を聞き、彼女を解放した。

「……」

「……」

しばらく続く沈黙。

ここ田舎だし、人通りも少なけどなんか恥ずいな。

「どっか入る?」

俺がそういうと彼女は黙って頷いた。




「そろそろ、なにか話してくれないかな?」

「……。」

物静かな喫茶店に入っても沈黙を続ける君。

俺は二杯目のコーヒーに砂糖を入れる。

俺が適当に頼んだ彼女のミルクティーは氷が溶けて、グラスが汗ばんでいた。

これを見る限り、結構時間が経ったことがわかる。

これって誰から見ても別れ際のカップルじゃねぇか。

まだ始まってもないのにこのまま終わるのか?

「俺のこと好きじゃないならはっきり言ってくれよ」

俺…フラれたことねぇし正直怖えけど。

「……」

これも答えてくれないわけね。

「もう、帰るわ」

フラれたもの同然だしな。

「待って…行かないで」

そういうと彼女は立ち上がる俺の腕を強く引いた。

「なんで?それは勝手すぎるでしょ?」

俺の告白には何も答えないのに、行くなって?

「…怖いの」

「なにが?」

「……」

「ちゃんと言ってくれないとわかんねぇよ」

「…言えない、言えないの…」

「わかった…わかったからもう泣くな。」

「ごめん、ごめんね…」

「ほんと、君は泣き虫だね」

そう言って彼女を自分の方へ引き寄せる。

「…みんなに見られてるよ?」

「見られてるんじゃなくて、見せつけてんの」




別にいいや、このまんまで。

俺がいることで少しでも君の支えになっているのなら。




俺は全力でこの泣き虫を守りたいと思った。

第3話。→←第1話。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (729 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1554人がお気に入り
設定タグ:義兄 , オリジナル , 恋愛 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まなか(プロフ) - はじめまして。すごくおもしろいです、全て読ませていただきましたが話がとても深く、とても感情移入してしまいました。更新等頑張ってください。楽しみにしてます (2021年1月12日 22時) (レス) id: 55942c365e (このIDを非表示/違反報告)
彩波 - 面白いです!!!! もう感動して泣きましたよー!! part 2も頑張ってください! (2019年2月16日 6時) (レス) id: 6f464ca19c (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - 魅月さん» ありがとうございます!!そのコメントに元気をもらいました!! Part2の方もどうぞよろしくお願いします! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - 匿名でいたいさん» うずうずさせてしまってすみません!笑笑 Part2できました^_^ Part2の方でもうずうずさせない程度に頑張りますのでよろしくお願いします! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - ゆうあさん» コメントありがとうございます!夢主が幸せになれるよう最後まで見守ってください^_^これからもコメントお待ちしております! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まりあ | 作成日時:2018年4月20日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。