☆ ページ26
『大丈夫ですか!?』
既にボロボロの服と浅い息。
冷たい肌には見るに耐えない程の数々の生傷。
「...俺に同情したら...同罪っす、よ...」
掠れた声でそう言う彼。
ほぼ目も開いていない彼は自分のことより他者のことを考えていた。
もしこの人が犯罪者なら.....
...でも事情を知らないからってこんな人を放っておいたら、人間としてなにか廃れる気がする。
私は傍にあったガラスの破片で腕を切る。
そして血が流れ始めた手を彼の口に押し当てた。
『飲んで。』
私がそう言うと彼は逆らうことなくその血を舐め始める。
あの時人を傷つけることができたなら、救えることだってできるはず。
私は心の中で何度も生きてと唱えた。
血の流れを意識して願いを込めるように何度も。
すると冷たい手が私の頬に当たり、優しげな笑い声が聞こえた。
「いいんすかこんな犯罪者生かしちゃって。」
私がパッと目を開けると彼の傷口の血は止まり、跡すらない綺麗な肌に戻っていた。
『よかっ_』
私が気を緩めた瞬間、彼の顔がいきなり近づいた。
「...フッw間抜け面っすね。」
え、なんか。...キスされたくね?
『セクハラ...?』
「なんすかそれ。ここでは挨拶ですよ。あ・い・さ・つ。」
私が固まっているとそんな私を見てまた笑う。
「やらしい物だと思ってるからそうなるんすよ。これは至って普通のことです。」
なんか私がおかしい感じにされてる。
挨拶だとしたら街の人みんなしてる...と言いたくなったがめんどくさい事になりたくなかったので言わないことにした。
私は無感心を貫き通さなければ。
『い、行きますよ。また同じことされるかもしれないです。』
「動揺ですか?寒いだけですか?」
彼はそう言って煽るように笑った。
「じゃあここの街ン中突っ切りますか」
『え...?そんな事しなくても裏から回れば...』
「れっつごー」
そう言うと彼は私の手を引いて街の中を走り始めた。
するともちろんの事、
「犯罪者が逃げた!!!」
「犯罪者の服を着ている、おそらく共犯だ!!!!」
と大騒ぎになった。
「これで有名人すね。」
そう満足気に笑う彼を睨んだ。
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華乃 - knさんが人魚姫、、、原作みたいに声奪われた場合のほうが王子様と上手くいくのでは??(黙ってたら絶世の美女??だし)rbrさんさらっとストーカーしてて恐怖を感じた(;゚Д゚)曼荼羅comさんの話はいつも面白くて読んでて楽しいです!更新ありがとうこざいます!! (2023年2月4日 19時) (レス) id: 86218e5349 (このIDを非表示/違反報告)
曼荼羅com(プロフ) - 華乃さん» コメントありがとうございます。姫という語感に似合わずサイコさんですが...utは個人的に性格似てるなと思う子にしてますので楽しみにしててください。 (2023年2月3日 16時) (レス) id: f1f738d729 (このIDを非表示/違反報告)
華乃 - あーrbrさん親指姫は可愛すぎるんじゃ〜!!ウーツ姫(ut)もおる、、、めっちゃ出てくるの楽しみ。更新ありがとうございます!これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2023年2月2日 21時) (レス) id: 86218e5349 (このIDを非表示/違反報告)
曼荼羅com(プロフ) - 天天さん» コメントありがとうございます。おっとここにもヤンデレさんが...ガーターにならないように気をつけます! (2023年2月2日 8時) (レス) id: f1f738d729 (このIDを非表示/違反報告)
曼荼羅com(プロフ) - 何をするにも「ら」を言ってしまう人ですさん» コメントありがとうございます。サイコさん...?(すいません)なんの報告かわからんけど報告ありがとうございます!頑張れ〜⚑︎ (2023年2月2日 8時) (レス) id: f1f738d729 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:曼荼羅com | 作成日時:2023年1月29日 6時