【d!】依存したいからって童話の主役が悪役の私を好きになるな！

マッチ売りの少女 ページ25

...あれ？

コロセウムを抜けて、また街の景色が変わった。
建造物は木やレンガで作られていて、そしてバカ寒い。

街の人達にここは魔法街ですかと聞くと、違いますと言う。

3人中3人がそういうものだからここの人は嘘をついてないと思う。

ということは...


『あ、すいません...ここって正義の...』

私がそう聞くと街の人は誇らしそうな顔で頷いた。


違う方に来てしまったかとしっかり道を見なかった自分を責めながら、
せっかくならこの街も見ていこうと無理やり明るく捉える。

「あの、！すいません。」

『え...あ、はい』

私が少し歩けば、待っていたと言わんばかりにここの街の人であろう女性が私に声をかけた。

「その格好寒くありませんか？」

『あー...実は少し...』

季節感がどうなっているのかは分からないが、ここの街はものすごく寒い。
薄い長袖で寒いと感じるくらいだ。

「もしよろしければこれ...着てください」


そう言って彼女は紫色のジャケットを渡してくれた。


『あ、ありがとうございます...！』

街の人が交換条件を出してこないことに安堵しながら私はそれを受け取った。


どこぞやのイカれた街と違って優しい街だ。


私はそう思いながら彼女に礼をしてそのジャケットに袖を通した。













あれからどのくらい歩いただろうか。

奥へ行くにつれて木で作られた家の確率が高くなり、
所々に燃えたかのような真っ黒な家や荒らされたような家の跡が多くなってきた。

その周りには花束や食べ物が置かれてるのを見て、此処には私の世界と同じ文化があるんだなと感心する。


「あいつ弱ってたぞ！」

「自業自得だ。悪は許されない。だから悪には何したっていいんだ。」


家に気を取られているとそんな声が私の横を通り過ぎて行った。

私も一応悪の道を歩いてる者なのでその会話を聞いて念入りに獣耳を隠しておく。


正義の国は狂気に＿


ふとコネシマさんが話していた事を思い出す。

でもジャケットくれるくらい優しい人がいる街だし......違うよね...？


そんな幻想は




「っ...は...は、ぁ...」


血を垂れ流して壁にもたれかかる彼を見るまでは崩れなかった。

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