7*僕とお友達に ページ8
「僕は、真冬…まふ、って言います」
『まふさん』は座っている私と目線を合わせてしゃがみ、微笑んだ。
「あ、緊張しちゃうよね、すっごく分かります…僕もコミュ障なので」
柔らかく高めの声。
不思議と、呼吸は乱れなかった。
「さっき、……伊東先生、って。
この学校じゃ、みんな歌詞先生って呼ぶから、珍しいなって…」
「…なまえ、なんで、」
単語で喋ってしまう自分の意図を、汲んでくれる人はとても少ない。
でもまふさんは、分かってくれたみたいだった。
「…あの、実は僕も1-Aなんです。
…でも、春ごろは不登校だったんだ、」
_______え?
かすかに目を見張った私に、まふさんはまた綺麗に笑う。
「そう、葉月さんと同じ。
さっきの人はそらるさん、1つ年上の先輩で、僕の恩人なんです。
そらるさんと、歌詞先生。それから、同い年の天月くんって子と、2つ上の鈴村先輩、って人もいるんだけど…
みんなが、家にこもって毎日泣いてた僕を、
救って、くれたんだ」
*
聞けば、その4人は、学校内外でとても有名な軽音部のメンバーで。
まふさんの家にも伊東先生は春から通っていて、音楽が好きなまふさんに、部活の話を沢山していたらしい。
______素敵な4人を想像して、まふさんは何度も外に出ようとした。
"でも、怖くて出来なくて"
それが余計にまふさんを苦しめた。
当時の精神状態は酷くて、
"もう死んじゃおっかなって、思って"
目の前に生きてるまふさんは、そう儚げに笑った。
どうせ死ぬなら、最後に外に出たい。
それで家を飛び出して、大通りの赤信号に踏み出した、その時。
ある人が全力で自分を引き止め、怒鳴りつけた。
___お前、何やってんだよ!!!
まふさんは、思い出すように静かに目を閉じた。
「その人が、そらるさんだった」
それからほぼ毎日、家に来てくれたそらるさんと、いつもの調子の伊東先生。2人を通して他の部員たちとも知り合い、最後には4人がまふさんを励まして、元気づけてくれたのだという。
「今は、普通に学校に通ってる。…たまに、泣いちゃったり、休んじゃったりするけど…
葉月さんのこと、先生が話してくれたんだ。伊東先生って呼ばれてるって…あと、とても繊細で優しい子だから、まふくんと仲良くなれそう、って」
「そう、だったんですか…」
まふさんへの恐怖心は、もう無かった。
「葉月さん、もし…よかったら。
僕と、お友達になりませんか?」
214人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あきおと(プロフ) - 刹那さん» ありがとうございます…!繋がりました!ちょっとだけ天宮くんにも、夢主の毎日に貢献してもらおうかなと思います!(笑)どっちも読んでくださって嬉しいです、更新頑張ります(^O^) (2017年8月15日 20時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 繋がったああああああ!やった!どっちも読んでる勢としては嬉しい限りです!とても!いつも歌詞さんのかっこよさにときめいてます(笑)更新頑張ってください! (2017年8月14日 20時) (レス) id: df5db280b2 (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - 黒。さん» ありがとうございます…!もうどこまでも夢主を甘やかしていくスタイルなので!!(笑)わたしもこんな先生に出会いたかったです…笑 (2017年8月1日 22時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - すごく引き込まれる作品ですね!歌詞さん優しすぎて、夢主ちゃんが羨ましいです…!こんな先生と関係を持ちたいです!(恋愛でもなんでもw) (2017年8月1日 22時) (レス) id: 20fadc7ccf (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - お兄ちゃん大好きさん» お兄ちゃん大好きさんありがとうございます!か、神だなんてそんなことはないですけど、(笑)でもとっても嬉しいです!!よかったらこれからもお願いします(*´-`)更新遅いですが是非! (2017年7月5日 2時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ