3*過呼吸 ページ4
それから伊東先生は、たまに私の住むアパートを訪ねてくるようになった。
私は相変わらずの無愛想で、玄関も絶対に開けないでいた。
気まぐれで私なんかに構うのをやめて、先生が来なくなってくれるのを期待して。
…なのに先生は、私がドア越しに返事をするだけで嬉しそうで、
くだらない質問をしてきては、くつくつと1人で笑う。
"葉月さんの好きな食べ物は?僕はねえ、…"
"小説、好き?僕めっちゃ本好きでさあ、夏目漱石の…"
"歌の話はまだしてないよね!僕、軽音部の副顧問で…今度CD持ってくるから聴いてよ、ボーカルの天月くんの声が特に最高で"
その度に私は、「あー」とか「はい」とか、ぶっきらぼうに返事をした。
「…変な人、」
*
1ヶ月、2ヶ月、…
_________先生が来るようになって4ヶ月も経ちそうなとき、
今日は先生と、恋愛の話をしていた。
(ああ、今日は過呼吸になりそう、)
恋愛の話はトラウマがあって、あまりしたくないんだけど。
でも先生の恋愛事情も、
…気にならないことはない。
『僕、実は女性恐怖症でさ!生徒はいいんだけど、同い年以上の先生とかだと、もうダメなんだよね』
隔てたドアの向こう、外の壁に寄りかかっているらしい先生の、
その言葉は、とても意外だった。
「………なにか、あったんですか」
『…んー。くだらないかも、だけど。昔付き合った人に速攻でフラれたことがあって』
「……ふうん」
感情が動いたら、思い出しちゃったら、どうしよう。
息が乱れそうで、それが怖かった。
だから私が適当に返事をしていると、
_________急に先生の声色が変わった。
『ねえ、
…今日だけはドア開けてくれない?』
…何を言ってるの、この人。
「…無理です、」
『や、だって葉月さん、今日、なんか呼吸おかしいよ。調子悪いんでしょう、カギ開けてくれなくちゃ助けられないから…』
先生の言葉に、ドキッとした。
(ああ、余計に苦しい、)
これ以上、
踏み込まれたら、怖い。
「や、大丈夫ですよ、…っ、気にしないで、」
『ほらー、その声がもう無理してるじゃん。僕には分かるんだからね!』
「っ、」
その優しい言葉を聞いた瞬間、
__息が詰まって、過呼吸に呑み込まれてしまった。
「っ、は、…はぁ、っ、せんせい、……帰って、もう、かえって…っ、」
『え、ちょ、葉月さん?!』
214人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あきおと(プロフ) - 刹那さん» ありがとうございます…!繋がりました!ちょっとだけ天宮くんにも、夢主の毎日に貢献してもらおうかなと思います!(笑)どっちも読んでくださって嬉しいです、更新頑張ります(^O^) (2017年8月15日 20時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 繋がったああああああ!やった!どっちも読んでる勢としては嬉しい限りです!とても!いつも歌詞さんのかっこよさにときめいてます(笑)更新頑張ってください! (2017年8月14日 20時) (レス) id: df5db280b2 (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - 黒。さん» ありがとうございます…!もうどこまでも夢主を甘やかしていくスタイルなので!!(笑)わたしもこんな先生に出会いたかったです…笑 (2017年8月1日 22時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - すごく引き込まれる作品ですね!歌詞さん優しすぎて、夢主ちゃんが羨ましいです…!こんな先生と関係を持ちたいです!(恋愛でもなんでもw) (2017年8月1日 22時) (レス) id: 20fadc7ccf (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - お兄ちゃん大好きさん» お兄ちゃん大好きさんありがとうございます!か、神だなんてそんなことはないですけど、(笑)でもとっても嬉しいです!!よかったらこれからもお願いします(*´-`)更新遅いですが是非! (2017年7月5日 2時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ