18*心のままに ページ22
もう、謝らないで。
小さな声で先生に言うと、また、ごめんね、と返ってきた。
遠慮がちに私を抱きしめる腕は、まだ私との間に、小さく隙間を空けていて。
髪を撫でてくる先生の手が、大切なものをそっと愛おしむように暖かくて、
でも、小刻みに震えていて。
(先生に、抱きしめられてる、)
____ 認識した途端に、鼻の奥がつんとして、
目に熱いものがじわり、滲んだのが分かった。
シャツに染みをつけてしまう、そう思って少し離れたら先生は、
「え、あ、ごめっ…!泣かせちゃった……!」
なんて、慌てて身体を離そうとして。
____ねえ、先生。
どうしてあなたは、
そんなに優しく私に触れるんですか。
離れて欲しい訳じゃない。伝わるように、先生のシャツをきゅ、と握る。
「………っ、え、」
先生の戸惑った声が、頭ひとつぶん上から降ってきて。
その心配そうな音色に、また視界が滲んだ。
「………っ、せんせい、…なんで、」
「…え…?」
「なん、で、…そんなに、やさしい、」
ぼろぼろと涙が溢れて、溢れて。
止まらない。
____他人なんて、安易に信頼してはいけなくて。人間関係なんて、脆くて儚いもので。
____男の人は強引で、怖くて、乱暴なもの。
ずっと、そう思っていたから。
「わたし、…ずっと、かんがえても…わから、なくて、
……せんせいが、…やさしいのが、うれし、くて、しあわせで…っ」
「だから、…ふつうの、…みんなに、おいつきたくて、…せんせいに、迷惑、っておもわれるのが、嫌、で、」
「どうしても、…どうしても、…せんせいと違って、みんなと違って、スタートラインにも立てないわたしはっ___ 」
今度は息が苦しいほどにきつく抱きしめられて、言葉の続きは言えなかった。
「Aちゃん…!」
___私を呼ぶ先生の愛情が、痛いくらいに分かってしまったから。
「…これでも、『私なんか』って、言える?迷惑だなんて、そんな悲しいこと、言える?」
「………っ、」
絞り出すような、辛そうな先生の声。
「スタートしたくて必死に頑張ってる君が、僕に迷惑なわけないだろ…!」
___好き、とか、嫌い、とか。
そんなことは、今は分からなかった。
ただ、先生の言葉が嬉しくて、嬉しくて、声をあげて泣きじゃくった。
先生、こんなに弱くて泣き虫な私を、
愛してくれて、本当にありがとう、って。
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あきおと(プロフ) - 刹那さん» ありがとうございます…!繋がりました!ちょっとだけ天宮くんにも、夢主の毎日に貢献してもらおうかなと思います!(笑)どっちも読んでくださって嬉しいです、更新頑張ります(^O^) (2017年8月15日 20時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 繋がったああああああ!やった!どっちも読んでる勢としては嬉しい限りです!とても!いつも歌詞さんのかっこよさにときめいてます(笑)更新頑張ってください! (2017年8月14日 20時) (レス) id: df5db280b2 (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - 黒。さん» ありがとうございます…!もうどこまでも夢主を甘やかしていくスタイルなので!!(笑)わたしもこんな先生に出会いたかったです…笑 (2017年8月1日 22時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - すごく引き込まれる作品ですね!歌詞さん優しすぎて、夢主ちゃんが羨ましいです…!こんな先生と関係を持ちたいです!(恋愛でもなんでもw) (2017年8月1日 22時) (レス) id: 20fadc7ccf (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - お兄ちゃん大好きさん» お兄ちゃん大好きさんありがとうございます!か、神だなんてそんなことはないですけど、(笑)でもとっても嬉しいです!!よかったらこれからもお願いします(*´-`)更新遅いですが是非! (2017年7月5日 2時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
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