17＊精一杯に ページ21
Aちゃんが頷いてくれたのを見て、
少しだけ安心した。
"ありがとう"、
そう言って、
ソファに座る彼女にそっと近づいて。
「Aちゃん、」
傍にしゃがんで、改めて目を合わせる。
「…伊東、先生？……あの、」
この角度だと僕の方が、ほんの少し目線が低くなる。
Aちゃんの表情がよく見えて、
_______ 彼女が戸惑ってるのも、手に取るようによく分かった。
(……ごめんね)
膝をついてから、Aちゃんにゆっくりと、震える腕を伸ばして。
背中に手を回し、
壊れ物を扱うようにそっと、彼女の身体を自分の方に引き寄せる。
______それから、ぎこちない動作で、
彼女をぎゅっと抱きしめた。
「………せん、せい………？」
小さく掠れた彼女の声が、耳元でかすかに揺れる。
______ああ、もう戻れない。
目を閉じて、そう思った。
道徳とか、モラルとか、生徒に教えるべき常識ってものを、
あろうことか自分が破って、今、生徒に手を出してしまっている。
いけないことなのに。
許されるはずがないのに。
緊張からか罪悪感からか、
自分の声だって酷く小さくて、少し震えてしまっていた。
「その………僕の、君に対する、……"特別"っていうの、は…
……こ、ういう、こと、だから………」
抱きしめたまま、その髪を柔らかく撫でて、曖昧に言葉を紡ぐ。
「立場上、……あまり、大きな声では…言えないんだけど、……怖がらせたら、…申し訳ないとも、思ったん、だけど……！
でも、……君のことが、
……ごめんね、…すき、なんだ……」
「……っ、……ぁ、あの、」
告げて仕舞えば、もう止まらなかった。
「っさ、最初は…生徒として、助けてあげたいって、学校に来て欲しいって、
…君の、笑顔を取り戻したいって、…そう思ってた…、のに、
だんだん、君の優しさとか…繊細さとか、たまに僕と話すときに、綺麗に笑ってくれるのを…見てたら、…」
「………せんせい、その、私、…」
「ごめん、…せっかく君が頑張っているときにこんなこと、ごめんね、」
「……あの、」
「ごめん、」
「……大丈夫だから、…もう、謝らないで……」
彼女の切なそうな声が聴こえたけれど、
_____僕はどうしようもなくて、もう一度。
ごめんね、と、腕の中の彼女に謝った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あきおと(プロフ) - 刹那さん» ありがとうございます…！繋がりました！ちょっとだけ天宮くんにも、夢主の毎日に貢献してもらおうかなと思います！(笑)どっちも読んでくださって嬉しいです、更新頑張ります（＾Ｏ＾） (2017年8月15日 20時) (
レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 繋がったああああああ！やった！どっちも読んでる勢としては嬉しい限りです！とても！いつも歌詞さんのかっこよさにときめいてます（笑）更新頑張ってください！ (2017年8月14日 20時) (レス) id: df5db280b2 (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - 黒。さん» ありがとうございます…！もうどこまでも夢主を甘やかしていくスタイルなので！！(笑)わたしもこんな先生に出会いたかったです…笑 (2017年8月1日 22時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - すごく引き込まれる作品ですね！歌詞さん優しすぎて、夢主ちゃんが羨ましいです…！こんな先生と関係を持ちたいです！(恋愛でもなんでもw) (2017年8月1日 22時) (レス) id: 20fadc7ccf (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - お兄ちゃん大好きさん» お兄ちゃん大好きさんありがとうございます！か、神だなんてそんなことはないですけど、(笑)でもとっても嬉しいです！！よかったらこれからもお願いします(*´-`)更新遅いですが是非！ (2017年7月5日 2時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
