あいしてくれれば kn⇔nk ページ35
なかむside
※狂愛
Hiroさんリクエスト
リクエストありがとうございます！
ふと目が覚める。
陽の光でも、物音でもなく、ただ自然と。
身体を起こせば、真白いシーツがかさ、と音を立てた。
気持ちのいい朝だ。いつもと変わらない。
身体を伸ばして、こきこきと首を鳴らす。
ベッドから降りて時計を確認してみると、短針は10と11の間を指していた。
もう朝という時間帯ではなかったらしい。
まぁでも、別に構わない。
寝坊しようが俺を叱るような人間はここには居ないし。
昨夜＿＿といっても日付は変わっていた訳だが、それなりに夜更かしもしていた訳だし。
ｶﾁ､と小さな音が壁の向こうから聞こえる。
...あぁ、彼がやって来たらしい。
｢おはよう、なかむ。｣
｢おはよ、きんとき。｣
お互いに｢おはよう｣と言い合って、触れるだけのキスを交わす。
まぁ、さっきも言った通り朝ではないのだけど。
｢体調はどう？身体が痛いとか...｣
｢んーん、平気。...強いて言うなら、お腹空いたかも。｣
｢そう言うと思って軽めにサンドイッチ作ってあるよ。食う？｣
｢食う！！｣
｢分かった｣と言って、彼が小さく笑う。
扉を開けて、また向こう側からｶﾁ､という小さな音が聞こえた。
...ここは、鳥籠の中だ。
窓もなければ娯楽もない。
ここにあるのは白いベッドと小さなテーブル、それと目覚ましの機能を無くした時計くらい。
あとは偶にきんときが持ってくる着替えとか。
特に不便に思ったことはない。
欲しいものがあれば言えば与えてくれるし、今日みたいに寝坊したって、誰も怒らない。
それなりにしあわせだ。
それに、なにより。
｢はい、どーぞ。｣
目の前に置かれた、シンプルなサンドイッチ。
俺が食べられるだけの量と、俺の好きな具材が入ったサンドイッチ。
ちらりと彼の目を見やる。
そのうつくしい瞳に込められた、愛情とも言い難いドロドロした感情に、気分が上がる。
...彼が、俺をあいしてくれている。
それだけで、十分しあわせだ。
手を取られたのはいつだったか。
この部屋に来て2回10月28日を体験しているから、もう2年になるらしい。
2人だけの誕生日パーティ。
ケーキと、小さなプレゼントを貰って、腹が満たされたらベッドに雪崩込む。
そんな誕生日を2回。
2人だけのパーティは少し騒がしさが足りないけれど、それでも良かった。
与えられたことの無い甘い蜜に溺れて死ねるのなら、それはそれでいいかと思えたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ローゼ | 作成日時：2021年8月12日 19時
