白尾さん達の恋模様8【BL】 (ページ26)

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｢絵に描いたようなサンタさんだったね...｣
｢ほんとにな。大人気なくテンション上がっちまった。｣

なんて、少し恥ずかしそうに頬を掻きながら君が言う。
緩んだ口元から吐き出される息が、空を白く染めた。

もじゃもじゃの白く長い髭に赤い服。
絵本の中からそのまま飛び出したかのようなサンタクロースに、成人男性2人が大人気なくはしゃいでいた様は中々に見ものだったと思う。
写真も撮れると言うことで近くにいた観光客に撮ってもらったスリーショットのうちの1枚は、僕の視線がシャークんにばかり向いていて少し恥ずかしかった。

スマホのフォルダに保存された写真から視線を外して、湯気を立ち上らせるココアに口を付ける彼を見やる。
今なら聞いてもいいのだろうか、なんて根拠も何も無いけれど、どうしたって気になったものだから。
隣の席に腰をかけて、僕もココアを啜りながら一言。

｢...それで？｣
｢ん？｣
｢なんで、ここに来たかったの？｣
｢あー...｣

彼の視線が遠くを向く。
その先にいるのは子供に囲まれたサンタクロース。
カップから口を離して、きゅうと唇を引き結んだかと思えば開いて。
そんなに言いづらいことなのだろうか。
興味があったから、ぐらいのことでは無いのは分かっているけれど。

｢...まだ内緒？｣
｢...｣
｢......まぁ、言いたくないなら別に...｣

ここで無理に聞き出して君に嫌われたら最悪だし。
別に絶対に聞きたいって言うほど気になっている訳でもない。
緑色の瞳をサンタクロースに向けたまま、彼はまた1口ココアを口に含んで、意を決したように口を開いた。

｢...5歳くらいのときにさ、好きな子がいたんだよ。同じ幼稚園に通ってた子でさ。｣

｢もう顔も覚えてないけど｣なんて、小さく笑う。
吐き出した息が湯気と混ざりあって消えていく。
突拍子もないような話に少しばかり困惑しながらも、先を促すように相槌を打った。

｢...へぇ。｣
｢その子と仲良くなったのが12月くらいで、子供だったもんだから、クリスマスプレゼントにその子と付き合いたい〜！って。...ませたガキだよなぁ...｣
｢かわいいエピソードじゃん。｣

高校生の頃から一緒にいるけれど、彼の昔の話を聞いたのはこれで3回目くらいな気がする。
彼は普段から積極的に自分の話をするタイプではないし、色恋の話になると尚更口を開かなくなるから珍しい。