彼氏面 sm⇔kn ページ22
きんときside
昨夜、スマイルと寝た。
寝た、と言ってもただベッドに入って朝になるまで一緒に寝ました、なんて意味ではなく。
...まぁ要するに、そういうことである。
どうしてそうなったかと聞かれれば、特にこれといって理由はなく。
つまりはノリと勢いで。
酒に酔って、一夜の過ち。
しかも高校時代からの友達...密かに想いを寄せていた、男と。
例によってほとんど記憶は残っていないのだが、まぁ悪くはなかった、と思う。
そんなこんなで儚くもハジメテを捧げてしまった訳だが＿＿＿
｢おはよう、きんとき。ホットミルクあるけど、飲む？｣
...こいつ、こんな優しかったっけ？
いつになく気遣わしげな態度で差し出されたのは、湯気を立ち昇らせるホットミルク。
それが入っているカップを見るに、どうやらここは俺の家らしい。
若干痛む腰に鞭を打ちながら上半身を起き上がらせて、青色のラインの入ったマグカップを受け取った。
｢...あざす。｣
｢別にいいよ。...腰、平気か？｣
とすり、と静かな音を立ててスマイルはベッドの角に腰を下ろした。
普段滅多に向けられることのなかったアメジストが一身に俺に浴びせられている。
気分が良いような、悪いような。
友達という線引きを越えて身体を重ねたからか、どうにも距離が近い。
お前パーソナルスペースめちゃくちゃ広かったじゃん、何だよ。
口に出しかけた文句を飲み込んで、ひとつマグカップに口を付ける。
ほの甘い香りが鼻腔に広がって、胸の奥が熱くなった。
｢...若干痛むけど、まぁ。うん。｣
｢そっか。...目、腫れてるな。｣
｢っ......！？｣
そう言って、自分よりも幾らか白い指が目元に触れる。
慈しむように、優しく。
ほんの一瞬爪の切り揃えられた指が触れて、柄にもなくびくりと肩が跳ねる。
何やってんだ、処女でもあるまいし。
...いやまじで、処女じゃないんだよな。
思い出して＿＿いや決して忘れていた訳では無いが＿＿＿その記憶に、じわりじわりと顔が赤くなる。
いつものように軽口を言うこともできずに顔を伏せると、不思議そうな声が降ってくる。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2021年8月12日 19時
