▽ ページ17
どうして俺じゃないそいつに笑いかけるの。
どうして俺には見せてくれなかった瞳でそいつを見るの。
ずっと隣にいたのは俺なのに、どうして。
...あぁもう、最低の気分だ。
俺より成績悪いし、運動は出来ないし。
体格はいいけど、俺だって負けてないし。
顔だって俺も同じくらいには良いし。
ぽやぽやしていつも眠そうなやつと一緒に居たって、べつに楽しくないだろうに。
俺の方が優れてるよ。俺の方がいいに決まってる。雲泥の差。
そんな、｢泥｣に構わないでよ。
手を伸ばして、触れようとした。
取り返してやりたくて。
奪い返して、そのまま逃げてやろうと思ったのに。
伸ばした手は途中で払われた。
じん、と小さな痛みが手の甲に走る。
敵意を滲ませた瞳で、瑠璃色がこちらを見ていた。
｢...シャークんのこと、泣かせないでくれる？｣
あぁ、あぁ、あぁ！！
そうやって肩を抱き寄せて、王子様気取りかよ。
いとも容易く彼を抱き締めて。
俺じゃできなかったのに。
あぁどうして、どうして。
｢泥｣のくせに、俺から俺だけの大切を奪おうだなんて。ふざけるなよ。
ぐつぐつと、腹の中で苛立ちが煮える。
だってどうせ、お前みたいなやつには俺を見上げていることしかできないのに。
それしかないのに。
何もできない筈なのに。どうして。
どうやったって俺には敵わないのに。
そんな垂れた瑠璃色で睨まれたって、別に怖くも何ともない。
何も恐れてない。
別にこのまま殴りかかられようが、別に怖くない。
何も恐れてなんかない。
その緑色が、俺に向かなくなることだって、別に。また振り向かせればいいだけだし。
俺ならそれができるし。そうでしょ？
...そうだよ。何も恐くない。
......恐れて、ない。のに。
｢っ...｣
あぁどうして、声がでない。
あぁどうして、身体が動かない。
こっちを見て。その手なんて振り払って。
あぁどうして、心ばかりが手に入らない。
つきり。胸がいたい。
痛い。痛い。...痛い。
目の裏が、ちょっぴり痛い。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2021年8月12日 19時
