泥の分際で俺だけの大切を奪おうだなんて kr→sh ページ16
きりやんside
※曲パロ
琴乃さんリクエスト
リクエストありがとうございます！
｢あのな俺、broooockと付き合ったんだ。｣
一番にきりやんに伝えたくて。なんて幸せそうな笑顔で、彼は俺に言った。
そのエメラルド色の瞳には、俺の見たことの無いような恋の色が映っている。
俺に向けられたことの無い、その色。
何年も一緒にいて、一度だって俺に向けられたことの無い色。
...それを、彼奴は簡単に手にいれたらしい。
｢きりやんなら、祝ってくれるかなって。｣
そう、無邪気に笑う。
頭の中が酷く暗く濁った心地がした。
ぐるぐるぐると、消化されない驚きと、苛立ちと、嫉妬。羨望。
あぁ、どうして。
｢...いや、｣
｢？｣
｢馬鹿じゃないの？｣
なんであいつなんか選んだの？
酷い言葉を吐いた。
もし俺が天使の羽を持っていたのなら、きっと一瞬でその羽が黒く染まってしまうだろうくらいには、酷い、ひどい言葉を。
君を傷つけるだけの言葉を吐いた。
案の定、君は酷く悲しそうな顔をして、傷ついた顔をして。
くしゃ、とその綺麗な顔を歪めて若葉色を滲ませる。
そんな顔させたかった訳じゃないのに、なんて心が叫んでも｢ごめんなさい｣と謝る選択肢は俺の脳裏にはなかった。
｢ごめん｣って、たったその一言すら、浮かんでこなかった。
｢...シャークん？｣
扉が開いて、今一番見たくない顔が現れる。
現れたそいつは、今にも泣きそうな彼の表情を見て急いで近寄って行った。
どうしたの？と問いかける声色は酷く甘い。
その手が彼の頬に触れて、ついに零れた一粒の涙をすくい上げる。
消えて欲しい。
消えて欲しい。
どうして隣に彼奴がいるのだろう。
どうしてそれは俺じゃなかったのだろう。
今すぐにそこから去って欲しい。
ぽっと出の野郎の癖に。
彼のことなんか大して知らないくせに。
...どうして、お前の方が選ばれたんだ。
その頬に触れるのも。
手を握って歩くのも。
君の隣にいるのは、何時だって俺だけの特権だと思っていたのに。
そう、信じて疑わなかったのに。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2021年8月12日 19時
