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触れて欲しくて。でも触れないで欲しくて。
触れられてしまったら、もうこの気持ちを抑えられない気がして。
お前に気づいて欲しくて。
でも気づかないでいて欲しい。
矛盾した想いは今日も、俺の心を締め付ける。
□
｢恋とは一体何かしら｣
br→sm
｢ねぇ、スマイル｣
穏やかな休日。
暖かい日差しの差し込む窓辺で本を読む理想的な午後。
遊びに来た割には何をするでもなく部屋を探索しては気になる本を読み、それに飽きてはちょっかいをかけてくる瑠璃色がちらりと此方を向く。
｢...何｣
｢恋って何だと思う？｣
｢何、いきなり｣
｢いいから｣
あまりにも突拍子のない言葉にはてなが飛ぶが、まぁいつもの気まぐれだろうと思考を切り替える。
恋。はて、恋とは。
気まぐれにしても突飛すぎやしないか。
咀嚼しきれない違和感はあるけれども、とりあえずと口を開く。
｢...恋とは、アドレナリンやらドーパミンやらセロトニンやらが脳から分泌されるとこにより、｣
｢あーあー!そういうんじゃないってば!もう!!｣
｢はぁ？答えてやっただろうが｣
｢だからもっとこう...ロマン的なさぁ...｣
視線を向けていた本を一旦閉じて、赤色を見やる。
彼は部屋のテーブルに上半身を預けたまま、その垂れ目で此方をじぃと見つめていた。
その視線に、少し、背中がそわりとする。
｢...人を好きになること、じゃねぇの｣
知らないけど、と1つ付け加えて、その視線から逃れるように外を見た。
何の面白みもない景色ばかりが広がっている。
何だろう。何だ、これ。
気恥しいというか何と言うか。
柄じゃないんだ。きっとそう。
｢ふぅん、そっか｣
｢おい、何だそれ｣
｢怒んないでよ。...じゃあさ、愛って何だと思う？｣
｢......何がしたいんだ、お前｣
続く質問に眉根を寄せる。
彼はからりと笑って、続きを促すようにまた、視線を送る。
どうせ答えないとうるさいんだろうな、なんて1つ溜息を吐いてまた、柄でもない言葉を紡いだ。
｢人に対する好きって感情とか...恋愛に限らず｣
｢へぇ...そっか。そうだね、じゃあさ｣
まだ続くのか、と文句を言おうとした。
いつの間にやら彼は俺との距離を縮めて、すぐ触れられる距離にいる。
その手が、俺の手を取って、彼の左胸へと導かれた。
どくり、とくり、と布越しの体温が伝わる。
ほんの少し頬を赤らめた彼は、照れたように口を開いた。
｢＿＿じゃあ、僕の、これは？｣
問に返そうとした口は、少しかさついた唇で塞がれてしまった。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2020年8月8日 18時
