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はぁ、と無意識に止めていた息を吐く。
存外早くに既読は付いて、｢いいよ、おいで｣なんて、短い言葉。
それでもいつもそうやって、俺が行っていいかと聞いた時に返してきたものだから、どきりと胸が鳴る。
そう笑う彼の声を何度も聞いた。
その声が好きだった。
今の彼は、どんな表情で、これを返したんだろう。
...これがデートの約束だったら良かったのに、なんてもう、後の祭りでしかないけれど。
翌日。
外は生憎の天気だった。
空まで俺を笑っている。
笑うなら笑え、どうせ無様なんだから。
1週間振りに見た扉が、やけに懐かしく感じるのはどうしてだろう。
インターフォンなんてもう暫く鳴らしてなどいなかったから、少しだけ指先が震える。
ピンポーン、なんて音がなって少しして、緩慢に扉は開かれた。
｢やっほー、上がって。｣
｢...うん。...お邪魔、します。｣
お邪魔します、なんてそれこそいつぶりの言葉だろうか。
もうこの家の前に来て、｢ただいま｣と口にすることもできないのだ。
...いやそもそも、もう来ることだってないのかもしれないが。
持ってきたカバンに荷物を詰める。
とはいえ1週間前にあらかた物は持って帰ってしまったから、残っているのは捨ててしまっても構わない物ばかりだ。
その中にアルバムやらが無いことに気づいて、自分の馬鹿さを自覚する。
捨てるべきだろ、そんなもの。
そうは思えども、どうせ捨てられないのなんて分かっていた。
｢お茶、飲む？｣
｢あー...貰おう、かな。｣
ぎこちない会話。
気まずい空気になんて、喧嘩の時くらいしかなったことなかったのに。
沈黙だって心地よいと感じられる関係だった。
......今はもう、そうじゃない。
｢＿＿＿...正直さ｣
長い沈黙の間、彼が口を開いた。
｢シャークんはもう、僕に連絡しないと思ってた。｣
｢...悪かったな、｣
｢あぁいや、責めてるんじゃなくてさ。...こう言ったらあれだけど、君は多分、引きずると思ってたから。｣
君は。君''は''ね。
あぁそうだ。その通り。お前の読み通りだよ。くそったれ。
引きずるに決まってる。
引きずってるに決まってる。
4年間の恋心を、たった1週間で捨てろなんて無理な話だ。
それでもお前がああ言ったから、俺は。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2020年8月8日 18時
