それでもまだ、だなんて br→nk ページ32
broooockside
※D/Vを匂わせる表現
大丈夫なの、と聞いた。
大丈夫じゃないのなんて分かりきってた癖にそう問うた。
彼はそのアクアマリンをほんの一瞬見開いて｢大丈夫だよ｣なんて、弱々しく笑った。
青白い肌で、そろそろ夏になるというのに長袖のシャツを羽織って、そう。
...そう笑って、ちょっと苦しそうな顔をする。
｢...ホント？｣
｢大丈夫だって。｣
｢また怪我、増えてるけど。｣
｢...平気だよ。大したことない。｣
ひらりひらりと、右の手を振る。
袖の隙間からほんの一瞬だけ見えた包帯が、やけに脳裏にこびりついて離れない。
けれど、それを言及はできなかった。
照明に照らされた茶色の髪が、きらりと光って見えた。
右目にかかる長くなった前髪が、さらりと揺れて、その隙間から水色が除く。
じわりと胸に広がる劣情と、罪悪感。
それらを全部噛み殺した口内は、どうしてだかやけに苦い。
｢無理してない？｣
｢してないよ。大丈夫。｣
｢...そんなに、ボロボロなのに？痛いでしょ、それ。｣
なんで、と零した。
答えは分かりきっていた。
何度も聞いた質問だった。
｢...俺がいなかったら彼奴、きっと死んじゃうから。｣
そう、睫毛を伏せて彼は言う。
何度も聞いた回答だった。
その前に、君が死んでしまいそうな癖に。
｢何か｣がある度に僕を呼ぶくらいには、もう心だって、ボロボロな癖に。
その癖に、まだ。
｢...それに、｣
まだ、そんなふうに。
｢好き...なんだよなぁ.....まだ、さ。｣
それでもまだ、好きだなんて。
身体も心もボロボロになって。
何度も何度も彼奴の涙に絆されて。
傷だらけの腕で抱きしめて来たんだろう。
間違ってるよ。間違ってる。
君を傷つけるような奴と、一緒になんていちゃいけないよ。
君が苦しいだけだよ。
嫌いになってしまった方が楽じゃないか。
憎んでしまった方が楽じゃないか。
...それなのに。それなのに、どうして。
｢馬鹿だね。...意味ないよ。｣
｢...知ってる。でも捨てらんないよ。惚れた弱味ってヤツかな。｣
｢...何で、好きでいられるの。｣
どうして、そんな奴なんか。
どうして、そんな奴なんかを。
もっといい人いるじゃん。
もっと優しい人がいるじゃん。
もっと君に相応しい人がいるじゃないか。
どうして蜘蛛の糸を渡って行くの。
どうして針の山ばかりを通って行くの。
もっと平らな道もあるでしょ。
もっと頑丈な橋もあるでしょ。
...どうして君は、いつだって。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2020年8月8日 18時
