世界の色 kn⇔nk ページ23
なかむside
※ライクさんリクエスト
リクエストありがとうございます!
ちょい闇。じ/さつを仄めかす表現
物心ついたときから、世界は灰色だった。
何かが圧倒的に足りなかった。
何にも興味なんて持てなかった。
どれだけ澄み渡った空を見上げても。
誇らしげに咲く綺麗な花を眺めても。
それらは等しく無価値で。
俺にとって青い空は、ただのモノクロの背景だった。
世界に色がついたのは、俺が大学に入ったばかりの頃だった。
あまりにも興味が無くて。
死のうが生きようがどうでもよくて。
とりあえず流されるがままに、親に進められた大学を受験して、なんとなく合格して。
そのときでさえも何も感慨は浮かばなくて、やはり無価値だったと毒を吐いたくせに、ほんの数日で手のひらを返すことになるとは。
『隣、いい?』
綺麗な青い瞳だった。
初めて、色の付いたひとを見た。
どきどきと、何故だか胸が苦しくて。
慣れない感情にはてなが飛んだ。
...それは正しく、一目惚れだったわけで。
そこからよく話すようになって、アピールにアピールを繰り返して、アタックにアタックを重ねて、ようやく。
出会ってから1年と半年。
ようやく胸を張って手を繋げるようになったのに。
付き合ってから7年と3ヶ月。
電話越しでしか声を聞けない生活が、2年と少し続いている。
「うん...うん、わかってる。頑張って。」
「ごめんな」と電話越しの声。
仕方ないよ、と笑うしかない自分に嫌気が差す。
いやまぁ、実際仕方ないことなんだけどさ。
1週間に1回。土曜日の夜にだけ。
こうして、朝が来るまで電話越しの会話を交わす。
1週間ぽっちじゃ大して真新しい話題は浮かばないけれど、それでも近所の猫が喧嘩をしてただとか、植木鉢の花に蕾がついたとか。
そんな他愛もない会話を繰り返し続けて、もう2年だ。2年。たったの2年。わかってる。
それでも顔を見れない日々が、2年、だ。
「好きだよ」と彼は言ってくれる。
俺もそれに何度も返す。
それでも、やっぱり不安は浮かんできてしまうのが人間というもので。
信頼してない訳じゃない。
嘘をつくような奴じゃないのだってわかってる。
それでも、それでもやっぱり、あの青い瞳に他の人が映るのではと思うと、どうしても恐ろしかった。
「...いつ、帰ってこれるんだっけ。」
『あー...早くてあと半年...くらい。』
「...そっか。」
『...ごめんな、ほんと。』
「いいよ、大丈夫。声聞けるだけでも、嬉しいしさ。」
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作者名:ローゼ | 作成日時:2020年8月8日 18時