ねぇ花婿さん br→sh ページ11
broooockside
※shさんのお嫁さんが存在します
｢俺、昔さぁ...お前のこと好きだったんだ。｣
なんて、君が少し恥ずかしそうに笑うから。
ぎゅう、と、胸が痛くなって。
｢そ、っか。｣
なんて、不器用に笑うことしか出来なかった。
僕は、今も、好きなのに。
......なんてこと、到底口には出せなかった。
ｺﾞｰﾝ...ｺﾞｰﾝと鐘が鳴る。
幸せそうに腕を組んで歩く彼がいる。
おめでとう、なんて口に出すのも、もう手慣れてしまった。
...いつから、こんなに笑顔が上手くなっただろう。
｢永遠の愛を、誓いますか？｣
YES、の言葉が唱えられた。
綺麗なウェディングドレスに身を包んだ花嫁を愛しそうに眺めて、誓いのキスが降る。
会場は拍手の音で包まれた。
少し頬を染めて、嬉しそうに彼は笑って。
ふと、その緑色の瞳と目が合った気がした。
その目が、今まで見たことが無いくらい幸せに染まっていたものだから。
柄にもなく、泣きそうになってしまった。
...感動なんかじゃなくて、悲しみの涙を零してしまいそうに、なってしまった。
｢...おめでとう。｣
ぱちぱちと手を鳴らす。
心は見たくないと言う癖に、何故か視線を逸らすことが出来なくって。
ずきんずきんと心臓が痛いのに、繕うことに慣れてしまったこの顔は、どうやら涙を流してくれないらしい。
いいなぁ。幸せそうだなぁ。羨ましいなぁ。
...いい、なぁ。
僕の方が、ずっと君のそばにいたのに。
高校生のときから、ずーっと。
でもだからといって、恋人になれる訳でも無いのに、膨らみすぎた恋情は訳もわからず八つ当たりを繰り返す。
僕の方が。僕だって。なんで僕じゃないの。
意味の無い八つ当たり。
口にもしないんじゃ何ひとつ変わらない。
好きと言えれば何か変わった？
素直になれていれば少しは？
分かってるさ。答えはNoだ。
...分かってる。分かりきってること。
あぁ、でも、やっぱりさぁ。
そう簡単に、この想いは無くなってくれないの。
｢ありがとな、来てくれて。｣
｢なんで？行くに決まってるでしょ。｣
｢...そっか。ありがとう。｣
嘘。ほんとは最後の最後まで行こうか悩んでた。
君が知らない誰かと一緒になる姿なんて見たくなかったから。
でも、逃げたところで何も変わんないのだって理解してて。
それならいっそ、見てしまった方が諦めも付くと思った。
...残念、作戦は大失敗だったけれど。
｢...俺、さぁ。｣
少しして、言い出しづらそうに彼が零した。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2020年8月8日 18時
