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頭がショックでガンガンと痛む。
治療法が無いなんて、そんなの。
彼奴が死んだら、俺は...?
...治さないと。彼だけでも。
他の患者なんてどうでもいいから、彼の治療を。
その為には、ワクチンを作らないといけない。
ただ、ワクチンを作るにしても、その病気がどんな物なのかを調べる必要があるしなぁ。
何か、いいサンプルが無いと...。
...あぁ、そういえば。
3人も居たね、’’いいサンプル’’が。
1人で全てやるのは厳しいし、なかむにも自分の病気を知っていてもらう必要があるから、協力を頼もうか。
きっと、彼なら了承してくれる。
「なかむ?いる?」
「あ、きりやん...。」
中庭に行って彼を呼べば、ベンチに座っていたなかむは、少し寂しげにこちらに微笑んだ。
「...どうしたの、元気ないじゃん。」
「分かっちゃうかw...ここに来ると、嫌な事忘れられるから。」
「...病気のこと?」
「...うん。」
星空を眺めていた彼は、俯いて、声を震えさせながら頷いた。
「...俺、死ぬかも知れないんでしょ?」
「っ...そんな事ない!!...俺が、絶対に治すから...!だから、そんな辛そうな顔、しないでよ...。」
「っ、きり、やん...。」
「俺が、守るから...。」
俺より幾らか背の低い彼を抱きしめる。
抱きしめた体は、細くて、弱くて。
今にでも、崩れてしまいそうで。
嗚咽を漏らして俺を抱きしめ返す彼は、酷く小さく見えた。
...守らないと。
俺が、彼を守らないと。
病気なんかで死なせない。
院長は頼りにならない。
俺が、やらないと。
_俺が、彼を助けないと。
____
__
_
病院の長い廊下を歩く。
患者棟の3階。重症患者室の方へ。
鉄で出来た重い扉を開けると、中には3つの白い部屋。
昨日より大分静かになった。
片方はもう喋れなくなったみたいだ。
「っぅ...あ...。」
kr「ああ、起きましたか。」
「何故...こんな事を...。」
目が覚めたらしい院長...いや、元院長か。
それが俺に声をかけてくる。
辛そうではあるけど、まだ自我は保てているみたいだ。
けど、昨日よりは症状が重いようにも見える。
kr「愛する人の為、ですよ。」
なんて言葉を零しながら、カルテに文字を書き込んでいく。
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作者名:ローゼ | 作成日時:2019年6月22日 7時