▽ ページ24
ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ＿ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ＿
あの日から3日が経った。
あれから特に変わった様子も無く、いつも通りに過ごしていると、スマホから着信音。
画面には、「シャークん」と記されていた。
「...もしもし。」
「よ、きりやん。」
「どうしたの？」
彼と電話をするのは初めての筈なのに、何度もした事がある気がするのは、きっと気の所為だ。
「なぁ、きりやん。」
「何？」
「ほんとに、俺の事覚えてないんだよな？」
そう聞く彼の声は、少しだけ、震えている気がした。
それに気づいた途端、何故か痛み始める心を無視して、質問に答えた。
「覚えてないよ。」
「...そっか。分かった。」
俺が答えれば、電話の向こうの彼は、自嘲するように笑った。
...酷く胸騒ぎがした。
理由なんて分からない。
ただ、今にも彼が消えてしまいそうで。
聞こえた声が、あまりにも切なそうで。
大して大切じゃない筈なのに。
つい最近、会ったばかりの筈なのに。
彼を失う事が、酷く怖かった。
「きりやん。」
また名前を呼ばれた。
スマホから風の音が聞こえる。
...まるで、ビルの屋上にいるみたいに。
「＿さよなら。大好きだった。」
その言葉と共に、スマホが置かれる音がした。
少しして微かに聞こえた、人の叫び声。
...シャー、クん？
「ぁ、ぁあ、あああぁぁぁあ！！！」
忘れていた。
思い出した。
ずっと、ずっと恋人だった人なのに。
誰よりも大切で、誰よりも愛してた人だったのに。
...彼を失うのは、何よりも恐れていた筈なのに。
何度スマホに向かって彼の名前を呼んでも、聞こえるのは風の音だけで。
俺の好きな彼の声は、全く返ってこなかった。
＿忘愛症候群＿恋人、又は片想いの相手を忘れてしまう病気
発症の条件は分かっておらず、治療法は＿＿
＿＿’’愛する人’’の、死とされている
...思い出した筈の相手は、もうどこにもいなかった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
WTさん、リクエストありがとうございました！
どちらがかかるのかリクエストには書かれていなかったので、こちらで決めさせて頂きました(_ _*))
注意書きで死ネタと書くと、落ちが分かってしまうので書きませんでした。
苦手な方、申し訳ありません(_ _*))
ご期待に添えたかは分かりませんが、楽しんで頂けたら幸いです！！
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作者名：ローゼ | 作成日時：2019年6月22日 7時
