白尾さん達の恋模様3【BL】 (ページ20)

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所詮僕は、きりやんの代わりでしかないのに。
そんなの、分かりきってる事なのに。
スマイルは僕をきりやんに重ねて、僕に抱かれているだけなのに。
それでも、少しだけ希望をもってしまう。
そんな希望も、直ぐに意味をなさなくなるんだけど。
行為中に、何度も呼ばれる彼奴の名前。
僕じゃない、彼奴の名前。
彼の視線を独り占めする、彼奴の名前。
...吐き気がする。

抱いてるのは、僕なのに。
目の前にいるのは、僕なのに。
君の好きな所も、全部知ってて。
それを、ちゃんといじってあげられるのも、僕だけなのに。
何度も、想いを伝えてるのに。
彼は、応えてくれない。
偽りじゃないのなんて、気づいてるでしょ。
分かってるんでしょ。
僕だって、君に愛されたいんだよ。
...応えてよ。

そんな事思ったって、彼はどうせ応えてくれない。
僕が一方的に愛を注ぐだけで。
彼は、それを受け止めてくれない。
穴の空いたティーカップのように、僕の紅茶(愛)は器(彼の心)から零れ落ちていく。
空っぽのままのティーカップは、注がれるかも分からない彼からの愛を、ずっと待っている。
...実らないって分かってるんなら、僕でいいじゃんか。

僕なら、君を傷つけないのに。
僕なら、君を泣かせないのに。
僕なら、君をちゃんと、愛せるのに。
いくらそう思っても、彼の心の中心にいるのは彼奴で、僕じゃない。
例えそれが出来ても、彼は僕を選ばない。
だって、代わりでしかないんだから。
都合のいい相手でしか、ないんだから。
僕の隣で眠る彼を見た。
肌は白くて、すべすべで。
少し上気した頬が可愛らしい。
彼の白い肌に映える紅が無いのが、本当に嫌になる。

痕を付ける事は許されないから、これで。
これくらいは、許してよ。
僕は、そっと彼の頬にキスを落とした。
擽ったかったのか、身じろぎする彼が愛おしい。
無防備に僕の前で眠る彼が、酷く愛おしく思える。
...それでも、想いは届かないから。

「好き...。」

だから、こうやって、1人で呟くだけ。
色んな想いが詰まった僕の言葉は、誰にも聞かれずに、何処かに消えた。