獣の森の王子様ーSide Storyー【男主】 (ページ13)

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とある上司の物語 01-12 ページ13

『……だろうな』

ようやく紡げたのは精一杯の虚勢だ。

『そうだ……終わったことだ』

「わかってるなら、そんな泣きそうな顔しないでよ」

『してない』

「しおりちゃんのほうから言い出したことだよ。
なのに傷つくなんて、ちょっとずるいよね」

『傷ついてない』

「……君ってば本当に嘘が下手だな」

麻生は重い嘆息をこぼす。

地を穿ちそうなそれは、宮園の虚勢さえも削いでいく。

張りつめていたものが弾けて、目頭が熱くなった。

慌てて手の甲で拭うが、何せ至近距離のため隠せるものでもない。

「あーあ。泣いちゃった」

麻生の声に呆れが混じる。

「いい歳して泣くなんて恥ずかしいね、しおりちゃん」

『うるさい……っ』

「困った子だなぁ。そんなに僕のことが好きなら、素直になればいいのに」

『すきじゃない……』

「好きだよ。言ったでしょ、顔見ればわかるんだって」

俯いた額に、伸びをした麻生がキスをする。

あまりの鬱陶しさに宮園は頭を振った。

『何考えてるんだ、馬鹿かっ』

「またそうやって簡単に馬鹿とか言うー。この僕を掴まえてそんなことを言うのは君ぐらいだよ」

ふっと相好を崩した麻生は、いつもの麻生だ。

眉を下げて苦笑すると、目を細める。