夜明け前の話 １ ページ18
唇が触れあったその瞬間に、どうしようもない劣情が弾ける。
それは瞬く間に全身に広がり、ただでさえ駄目になっている思考を鈍らせた。
胸ぐらを掴んだまま、宮園は強引に体を押しつける。
「まって、しおりちゃん……ちょっと落ち着こう」
麻生が言った。唾液でしっとりと濡れた唇がたしなめる。
「がっつかないで、ね？」
肩に添えられた手が、労るように動いた。
そのまま肩甲骨の際を辿り、浮き上がった筋肉の形を確かめるように這う。
『ん…っ、きょういちろ、う』
じわじわと競り上がるのは甘い疼きだ。
それがどうにも焦れったくて、気持ちばかりが逸る。
宮園は吐息を溢し、体をより擦り寄せた。
より直接的な刺激が欲しい。
隔てる布の一枚でさえもどかしかった。
「落ち着いて落ち着いて」
麻生の声はいつもと変わらない、明朗なものだ。
間近にあるアーモンド形をした瞳が笑みを作り、同じように弧を描く唇は額に触れた。
前髪をかき分け、何度もそこにキスをする。
『ぅ、ん…』
「大丈夫？」
背を撫でていた手は腕を辿り、手首へと流れ着いていた。
やんわりと掴まれて、宮園は握り締めていたシャツの襟をそっと解放する。
「ついに絞め殺されちゃうかと思ったよ」
麻生は微笑んだ。
『俺に殺される心当たりがあるのか？』
宮園は憮然とする。
行き場をなくした手は下に。
麻生のシャツの裾に指を絡め、じわじわと引っ張る。
「まぁ、それこそ死ぬほどあるよね」
唇は瞼へと下り、最終的には頬へ触れた。
全身に広がった劣情が甘く蕩け、さらに奥から生々しい欲望が顔を覗かせる。
『ん…、もっと』
表面だけの接触だけでは我慢できなかった。
宮園は麻生へと再び体をすり寄せる。
『したい…、しよう』
恥じらいもなく触れたのは、麻生の中心だ。
まだ兆していない。
でも服の奥に隠されたそれが、いかなる快感をもたらしてくれるのか。宮園は身を持って知っている。
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作者名：茄恋 | 作成日時：2017年12月21日 0時
