【 第27話 】 ページ29
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やはりどの世界でも事実は小説よりも奇なるもので、時間は理解を置いていくものらしい。
気がつけばポートマフィアと探偵社が密会をしている。
ポートマフィアへ同盟を申し込むのだ。
当然ながら互いに丸腰という訳ではなく、人をつけての密会だ。
鈴木も仮とはいえど探偵社員、むしろポートマフィアと何か関係があるとバレないように堂々と胸を張って並んで──はいない。
そんなことが出来る訳もなく、頼まれる訳もなかった。
潤一郎と共に隠れ、密会が暴力沙汰に発展しそうならばなるべく止める。要はサポートメンバーだ。
潤一郎の異能力『細雪』の発動を妨害されないよう守る役割なので、正確にはサポートのサポートなのだが。
同盟の提案者は敦である。
彼が体験した、文字通り血を吐くほどの惨禍と悲劇から導いた提案だ。同じ協定提案といえど、己個人の提案なんぞとは全くもって重みが違う。
しかし、鴎外は首を縦には振らなかった。
話し合いは進むどころか、場の雰囲気はますます険悪になっていく。
そして、抜刀。
瞬きも許されないほどの早さだが、見事に対応した潤一郎の技量に驚く。
いや、それよりも前から異能を発動していたのだろうか。全くわからなかった。
潤一郎と共に皆の前に出ると、やはり冷静な者の多いこと。
鴎外のこちらを見る目はいつもと変わらない。鈴木自身も初対面かと錯覚しかけたほど、かつて面識があったとは思わせない表情だ。
図書館でも本を守るための戦いは毎日のようにあるし、怪我人も出れば奇襲されることもある。
冷静なことは何より大事だ。
しかし、大事と分かるからといって常に冷静になれる訳ではない。
理解が即行動に移れるかといえばそうではない。むしろ精神的なことであればなおさらだ。
だからこそ、この場にいる人たちが恐ろしい。
中でも、焦ることなくむしろ楽しい会議だったと締めくくり、立ち去ろうとする鴎外を、もはや恐ろしいとさえ思う。頼もしいというより、恐怖が勝る。
ただひたすらに冷静なのか、慣れなのか。
「今夜探偵社はQの奪還に動く。今夜だけは邪魔をするな」
お互いのために。
社長はそう話を締めくくる。他人事のように聞こえるだろうが、終始胃が痛くなるような話だった。
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西 - この方角に福があるはずです
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新美南吉@文アル大好き💛 - もっと文アルメンツとのからみを増やして頂きたいです (2023年3月11日 1時) (レス) @page18 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
朱備(プロフ) - サーモニウムさん» コメントありがとうございます。ちょっと変わった始まりにこだわったので、気付いていただけてとても嬉しいです。中々更新できない状態が続いていますが、よろしくお願いします (2018年10月10日 21時) (レス) id: a1b9f2f616 (このIDを非表示/違反報告)
サーモニウム(プロフ) - クロスオーバーの仕方が独特で、とても面白いです!更新を楽しみにしながら応援しています!!! (2018年10月10日 16時) (レス) id: d876c6f450 (このIDを非表示/違反報告)
朱備(プロフ) - 杞憂さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。とても遅い更新となっていますが、これからもこの作品を宜しくお願いします (2018年1月10日 18時) (レス) id: a1b9f2f616 (このIDを非表示/違反報告)
杞憂(プロフ) - すごく面白いです!クロスオーバー作品ってあまり好きでは無かったんですけど、この作品は大好きになりました!これからも頑張ってください! (2018年1月10日 17時) (レス) id: bbdda47fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱備 | 作者ホームページ:http://kakyoinlove
作成日時:2017年12月3日 17時