【 第25話 】 ページ27
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こんな悪夢を見た。
街は燃え、人は泣き、暴れ、狂い、死ぬ。血の涙を流しながら壊れていく人々。まさに地獄。
しかし、蜘蛛の糸のように細い希望を信じる者たちによって、彼らによって地獄から這い出ることができた。
そして、数日が過ぎた。場所はとある公園。
この公園も損害を受けたものの、辛うじて無事な遊具がいくつか残っている。そのために子供があちこちで遊んでいる。
いつの時代も元気に遊び、笑う子供を見るとこちらまで元気になれる気がする。
不思議なものだ。魔法でもなければ異能力でもなく、錬金術でもない。
もちろんこれはサボりではない。街の見回りである。他の業務は自分たちでやるからと唯一任されたのがこの仕事だ。
一通り回ったが昨日と同様異常なし。暴走する気配も、不気味な人形もない。
さて一休みとベンチに座る鈴木の背後から誰かが呼び掛ける。
「お久しぶりです。ご無沙汰しておりました。」
いやに優しいが背筋が凍るような声。忘れもしない、あの男である。
「お久しぶりです、四迷さん。」
振り向くと四迷は気味の悪い微笑みを浮かべ、迷いなく隣に座る。
顔は四迷に向けたまま、ポケットの携帯電話へ手を伸ばす。
彼はこの街で別の事件を起こしていると聞いた。かつて襲われたこともあり、もし何かあれば連絡しろと独歩からきつく言われている。
が、しかし。
「おっと、武装探偵社への連絡は控えていただきたい。今日は実験をしに来たわけではないのですから。
……それに、あなたは私がいなければ帰れなくなりますよ。」
ぴたりと手が止まる。嘘なのか。自分を揺さぶり、捕まらないようにするための嘘なのか。
電話をするべきかしないべきか、少し迷ったが結局携帯電話へ伸ばした手は戻すことにした。
帰る方法。最も欲しい情報に目をつむる事は出来ない。
手は最初の位置へ、つまり膝辺りへ戻しながら鈴木は問いかける。
「どういう事ですか。」
「正確には私ともう1人がいなければ、ですが……、まぁいいでしょう。
言葉の通りです。あなたは私たちによってここに来た。逆も然り、私たちがいなければあなたは帰れない。」
どういうことだ。情報を受け止めきれない頭を必死に動かす。
四迷は反応を楽しむように、ただただ静かにこちらを見つめ、微笑んでいた。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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新美南吉@文アル大好き💛 - もっと文アルメンツとのからみを増やして頂きたいです (2023年3月11日 1時) (レス) @page18 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
朱備(プロフ) - サーモニウムさん» コメントありがとうございます。ちょっと変わった始まりにこだわったので、気付いていただけてとても嬉しいです。中々更新できない状態が続いていますが、よろしくお願いします (2018年10月10日 21時) (レス) id: a1b9f2f616 (このIDを非表示/違反報告)
サーモニウム(プロフ) - クロスオーバーの仕方が独特で、とても面白いです!更新を楽しみにしながら応援しています!!! (2018年10月10日 16時) (レス) id: d876c6f450 (このIDを非表示/違反報告)
朱備(プロフ) - 杞憂さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。とても遅い更新となっていますが、これからもこの作品を宜しくお願いします (2018年1月10日 18時) (レス) id: a1b9f2f616 (このIDを非表示/違反報告)
杞憂(プロフ) - すごく面白いです!クロスオーバー作品ってあまり好きでは無かったんですけど、この作品は大好きになりました!これからも頑張ってください! (2018年1月10日 17時) (レス) id: bbdda47fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱備 | 作者ホームページ:http://kakyoinlove
作成日時:2017年12月3日 17時