猫と家族 ２ ページ2
「兼続、いい。景勝、私も同じ思いだ」
景勝がそれを聞いて尻尾を何度か振った。そんな景勝に一瞬だけ柔らかく目元が緩んだ謙信様だけど彼はすぐに引き締めて家臣たちに尋ねた。
「先に大きな戦があった。敵軍が次の戦に向けて間者を送っているという事も充分に考えられる---
それに我が領内の者が傷つけられているのだ、野放しにはできまい。念のため、様子を見てきたほうがいいだろう」
「わかりましたぞ、謙信様！幽霊やかまいたちが別の者とお考えなのですな！」
「景家、もしかして信じ切ってるのですか？」
私は呆れたようにため息をついた。景家は聞こえていないらしく意気込んで
「それでしたら謙信様、お任せください！なあに、寺まで一走りしてくだけで…」
「景家」
景持が今にも飛び出して本当に寺まで走っていきそうな景家を止めた。ナイス、景持。
「敵を知らずしてどう攻めるというのです？」
「そうですよ。俺は物の怪とか幽霊とか信じてないですけどもし物の怪の類だった場合、どうするんですか」
「僕も、そう思う…いくら景家が強くても、腕っ節だけじゃどうにもならない…」
「む、景勝様まで…」
皆に止められた景家はしゅんと尻尾を垂らした。
取り敢えず慰め程度に、耳が倒れている頭を軽く撫でた。
「しかし、見て見ぬふりなどするわけにもいかないだろう」
「だから策もなしに行くのか？景家」
いつの間にかいた彼岸が景家に呆れたように聞いた。景家はその言葉に「ぐぬぬ…」と唸って頭を抱えた。
「しかし、景家の言うことはわかります。早めに対処しなければ被害が拡大するかもしれません」
「だけど、どう行くってんだよ」
彼岸の冷静な問いかけに皆が頭を抱えてどうするか考えている。
其の時、謙信様の雰囲気がふっとっ緩くなった。謙信様は立ち上がって開いたままの障子から月を見上げ、
「----折よく、今日は満月だ。出かけてみるのも悪くはなかろう」
私も立ち上がって彼の隣で満月を見上げた。前の世界でも変わらない藍色の空に満月が昇っている。
謙信様は私を見て微笑み、
「行ってみるか、その寺に」
と言った。
「いいのか、謙信」
彼岸は静かに聞いた。それには私も行ってもいいのかという意味も含まれていることは何となくわかっている。
読者様へ
日々のご愛読ありがとうございます。
この度は私情でお休みさせていただきましたが、ようやく落ち着いてきたので更新を再開したいと思います。
これからもよろしくお願いします。
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あかり（燈）(プロフ) - 理衣さん» はい、少しだけ話を変えて書いています。 (2018年3月11日 13時) (
レス) id: 914f7010c5 (このIDを非表示/違反報告)
理衣 - これは、発売された小説「掌中之珠」と同じのをかいていますよね？ (2018年3月11日 10時) (レス) id: 0d8c8c0b60 (このIDを非表示/違反報告)
ハルル - 上杉謙信のことがすごく好きなので、早く続きが読みたいです。待ってます。 (2018年1月29日 10時) (レス) id: 4e10d5168c (このIDを非表示/違反報告)
あかり（燈）(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張りますね！ (2018年1月27日 16時) (レス) id: 914f7010c5 (このIDを非表示/違反報告)
銀狼(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年1月27日 0時) (レス) id: 59f45044d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あかり（燈） | 作成日時：2018年1月26日 16時
