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猫と家族 ページ1

*主人公は前の世界の記憶を持っています。
*彼岸が普通に人間のような姿をしています

ある満月の日。
夕餉の時、兼続がふと「そう言えば…」と言って謙信様に向き直った。
「謙信様、近頃城下の見回りをしているときに妙な噂を何回か聞いたんです」
「妙な噂?珍しいな、兼続が噂を気にするとは」
景家はわはは、と豪快に笑った。実際気にしない性質だから珍しいけれど。
兼続は何処か不機嫌な表情で
「くだらない噂だったら無視してますよ。でも、今回のは引っかかるんですよ。領内に出る赤ん坊の幽霊の…」
「赤ん坊の?」
思わず聞き直した。赤ん坊の幽霊なんてあっちの世界でも聞いたことがない。あるとしても赤ん坊を墓の中で育てたという幽霊ぐらいだ。
「ああ、その噂ですか。俺も聞いたことがあります。外れの廃寺でしょう?」
兼続は頷く。謙信様は箸を置いて話に耳を傾けた。
「はい、なんでも赤ん坊の幽霊は夜な夜な寂しげな泣き声を上げるそうなんですが…最近はぱったりと聞こえなくなり、領内の子供たちがその後を確かめるために肝試しをしたそうなんです。その子供たちの中にかまいたちにやられたような傷を受けたものがいるみたいです」
「かまいたちとは又、面妖だな」
私の後ろの障子に寄りかかっている彼岸はそうぼそりと呟いた。私は何となく聞いてみた。
「彼岸はかまいたちを見たことがありますか?」
「んなもん、あっち側だったら何回も見るに決まってんだろ?ま、俺の知り合いはここらが縄張りだったけどこんな事する奴じゃないしな」
「そう」
「ならば、この廃寺には妖怪がいるのか?」
彼岸は腰を上げて障子に手をかけてから、景家に答えた。
「妖怪は何処にだっている、誰かが信じてくれる限りな。…謙信、少し居なくなる。もしなんかあったら御前さんに言ってくれ」
そう言って障子を開けたまま彼はどこかへ行ってしまった。謙信様は何処か呆気にとられたような顔をしていた。
「あ、あの謙信様、この噂では領内の者が傷つけられています。もし今は止まっていたとしても…また起きたら被害が拡大してしまいます」
「そうだな…景勝。お前はどう考える」
それまで黙って聞いていた景勝は、一瞬迷うような素振りを見せてから口を開いた。
「僕は…噂の真偽を確認したほうがいいと思います」
「お前なぁ…言いたいことがあるならさっさと言えよ」
「でも、僕はまだ軍を動かせるようなことはしてない…」
景勝はそのままで総大将になればいいんじゃないのかな。

猫と家族 2→



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あかり(燈)(プロフ) - 理衣さん» はい、少しだけ話を変えて書いています。 (2018年3月11日 13時) (レス) id: 914f7010c5 (このIDを非表示/違反報告)
理衣 - これは、発売された小説「掌中之珠」と同じのをかいていますよね? (2018年3月11日 10時) (レス) id: 0d8c8c0b60 (このIDを非表示/違反報告)
ハルル - 上杉謙信のことがすごく好きなので、早く続きが読みたいです。待ってます。 (2018年1月29日 10時) (レス) id: 4e10d5168c (このIDを非表示/違反報告)
あかり(燈)(プロフ) - ありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年1月27日 16時) (レス) id: 914f7010c5 (このIDを非表示/違反報告)
銀狼(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年1月27日 0時) (レス) id: 59f45044d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あかり(燈) | 作成日時:2018年1月26日 16時

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