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『すみません！今荷物まとめて行きます！』
治「さっきの、前練習試合やったとこの奴やったよな？」
『はい、最近連絡とっている人です。』
奴って、仮にも彼は先輩なんだけど……と思ったが、口には出さずにいた。どこか機嫌の悪そうな彼に、少し恐怖を感じたからだ。
治「あいつと会うのもう辞めや」
『……？何でですか、？』
治「春高予選中やぞ、仮にも敵チームの奴にうつつを抜かすなや。」
『それ、どう言う意味ですか？』
強い口調で言われたことに対して不満を持つ。治さんの言ってることは、つまり、
『ウチが敵チームにみんなの情報を漏らすってことですか？』
治「そうは言ってへん。それに、バレーボールに私情を持ってこられても迷惑や。」
『心外や。ウチのことそんなろくでなしやと思ってるんですか？』
治「とりあえず、あいつと会うのは辞めろ。許さへん。」
『あいつ、じゃなくて孝太さんです。ウチに優しくしてもらってる人のこと悪く言わんでください。』
治さんと睨み合う。
少しショックだったのは、いつも何かと反対してきた侑さんじゃなくて、初めの頃からそれなりに仲良くなっていた治さんに否定されたからだ。
ウチは稲荷崎のバレーボール部のマネージャー。さっきも適当に流したように、敵チームに情報なんてながさないし、そんなつもりはなかったが、彼と付き合ったとしても部活のみんなには迷惑かけない。
何で治さんはこんなにも怒ってるのか、理解できなかった。
『……やめましょう。大事な春高予選中です、喧嘩は保留にしておきましょう。』
治「おいっ、待てや！」
『ッ！？』
その場を立ち去ろうとすると腕を強く掴まれる。
痛い、治さんってこんなに力強かったの？
『ぃ、いた、』
「何してるん？男の子が女子にランボーしちゃあかんやろ？」
頭に顔をしかめると、孝太さんが間に入ってくれた。
「Aちゃん、可哀想やなぁ。俺が彼氏になって守ってあげよか？」
治「っ、どの口がッ！」
『ま、まって！治さんやめて！』
治さんが孝太さんに掴み掛かろうとしたのを抱きついて止める。問題沙汰は絶対ダメだ。
『ウチが悪かったから、はよ行きましょう。孝太さんごめんなさい。』
先ほどとは逆に、ウチが治さんの腕を引っ張って連れていく。
「Aちゃん、俺は本気やで？」
最後にそう聞こえたけど、気づかないふりをした。
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作者名：七瀬七海
| 作成日時：2024年3月6日 23時
