もう2度と、バレーボールはやらないと【HQ】 (ページ44)

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及川視点

何だこの生意気な黒髪は！

最初はそう思った。

金田一や国見から噂は聞いていた。

志麻隆弘……バレーボールの元オリンピック代表、になるはずだった人、の息子。

確かに、顔や雰囲気はどこかそっくりで、身長はあまりないけどこれから伸びるだろうし、もっと似て行くんだろうなと、不謹慎にも思った。

及川「もしかしてシマの息子くん！？噂でちょっと聞いてたんだよね〜」

そう告げると、複雑そうな顔をして笑う彼。

『今は星宮です。』

それなりに整っているのに目の下の隈が勿体無い顔で、苦笑いされる。

左足をチラリと見ると、痛々しくサポーターがつけられている。

及川「挑むなら本気で来なよ、叩き潰してやるから」

及川「舐められた態度取られるとムカつくんだよね〜。膝が悪いとか控え選手がどうとか知らないけど、やる気がないなら」

コートに上がるな。

そう、威嚇をする。

あわよくばそれで怯んで欲しかったんだけど、さすがプロの元で練習してきた身、謎に感謝された。

……正直、烏野に負けたのは悔しかった。

ウシワカを倒して全国に行きたかった。

でも、嬉しかったのだ。

数年前まで少しだけ憧れていた、選手のサーブ、スパイクとそっくりの攻撃が

彼がプロの道に進むのなら、応援してやらなくもないとも思ったが、そんなこともなさそうなので、適当にサインあげるよ〜などと言ってその場を去る。

最後にAの頭を乱暴にわしゃわしゃと撫でると、少しだけ目を細めて、嫌そうに、でもどこか嬉しそうに笑った。