胡蝶の夢の如く② (ページ10)

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松田が陽葵と合流してから爆弾解体まで早かった

瓦礫を掻き分けて登ってきた松田は煤だらけで明らかに疲労困憊していた

が、解体となれば別だ

『素人が作ったもんだ。心配すんな』

悪戯を考えた子供のように妖笑していた

松田は陽葵と会話しながらコードを切っていく

タイムリミットが近づく音と交互に響いた

『ハッピーバースディ。陣平くん』

残り、３分と言うところで松田は手を止めた

「新しいサングラスでしょ？かっこ良く使いこなしてねっ」

「誰に言ってやがるんだこのヤロウ」

陽葵の額を軽く小突くいた

松田はポケットに手を入れ、掴んだものを陽葵の手の中の押し込んだ

「サプライズはこうやるんだよ。バーカ」

松田は不敵に口元を上げて一笑した

「陣平くんの誕生日なのにくれるの？」

「はっ、いつぞやとお前と同じだろ」

「ふふふ。そーだったかなぁ？」

再び、タイマーと向き合う時陽葵を一瞥した

陽葵がそれに気づくことはない

(赤と青のコードか...)

松田にはこの選択がよりリアルに見えた

『赤い糸の伝説』なんざこれっぽっちも信じちゃいねぇ

陽葵がこうも好きじゃなかったら多分、嫌、結構馬鹿にしてた

『焦りこそ最大のトラップ』

(...良く言ったもんだ。俺も)

「なぁ陽葵」

「なぁに？」

自分自身に返ってくるとはな

「赤と青、どっちが好きだ？」

「ん？」

「いいから」

思考も視界もクリア

「赤...かなぁ」

解除方法も頭にある

俺の身体は全て機能している

「言うと思った」

何時もと違うのは惚れた女の命の重みだけ

間違うわけにはいかねぇんだ

『陽葵を生かす為の選択を』

「遅かったね。心配したし」

「楽勝だっつーの」

「の割には時間かかったんじゃない？見てよ着信履歴ヤバイのよ」

外は人で溢れ帰っていた

数秒残して解体した松田が一息吐いたところで陽葵は深い眠りに着いた

「図太い奴」

「緊張解けたんでしょ？許したげて」

二人は救急車に乗り込み、萩原と別れた

陽葵が深い眠りに着いた為に念を入れて検査するそうだ

『お揃いだね』

『これぞサプライズだな...』

『なんか、赤い糸みたい』

メタリックに輝く赤い指環は陽葵の左小指と松田の左小指にある

まるで二人を繋ぐ赤い糸のように

(俺も焼き回ったな...)

(赤いコードが『ソレ』に見えて切りたくなかった、なんて)

(やっぱ、好きだわ)

寄り一層、松田の想いは確固たる物に変わった事件となった

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