胡蝶の夢の如く② (ページ14)

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夕方、安室と陽葵は並んで歩いていた

安室の両手には中ぐらいの買い物袋が二つ握られている

陽葵の手には小さな袋二つ

「重い？」

「重くない」

安室は陽葵に荷物を持たせようとはしない

本人は当たり前だがけろっとしている

「そうだ。陽葵、僕が初めてハムサンド作ったこと覚えるか？」

「ハムサンド？勿論！覚えてるよっ」

今でも大好きだもん、と陽葵はあどけない笑顔を見せた

「それがどうしたの？」

「蘭さんとコナンくんに聞かれてね。少し思い出したんだ」

「？」

「陽葵が大泣きした時の事をね」

『れぇぇえいぃくんっ！私もサンドイッチ食べたいぃぃ！！カレーライスも食べたいぃのーっ』

『お子ちゃま陽葵の口には無理な話だな』

『意地悪言わないでよっ』

はっと思い出したらしい陽葵は顔を真っ赤に染めてぽかぽかと安室を叩く

「あ、あ、あれは忘れてていいのっ」

「忘れるわけ無いだろ？あのときお前、俺の部屋に引きこもったんだから」

安室は笑いながらも大人しく叩かれていた

「だって、食べたかったんだもん」

「知ってる。そう思って作ったんだ」

「やっぱり透くんは凄いねぇ。何でも出来ちゃう」

「まぁ、他でもない君の為なんだ。惜しむ事はしないさ」

結局、安室にとってその出来事が料理のきっかけだった

「ふふふ。何時もありがとうねっ！」

輝く太陽と豊満な栄養と清らかな水をえた蕾が大輪の花を咲かせた

『おいしぃぃっ！！れーくんありがとー』

あの日のように

ポロポロと泣きながらふにゃりと笑うのもいい

安室のやる気スイッチを押すのは何時も陽葵だ

「さ。変えったら明日のパンケーキの準備しよう」

「うん！透くんも明日は居る？」

「ん。休み」

「わーい！一緒に食べようねっ」

あの日見た笑顔がどうしても忘れられなくて彼のなかで息づいている

「そんな事いって、俺のも食べるつもりだろ？」

「...そんなこと、ないよっ！」

「くくくっ。嘘つきだなぁ陽葵は」

何より彼女の隣に居ることは彼にとって賭けがえの無い幸せであり、楽しい時間なのである

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