年下の君が言うことを聞いてくれない【轟焦凍】 (ページ14)

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過去の話7 ページ14

あの後、私の個性で威力を増したガスバーナーはなんとか少年の個性氷を溶かしつくした。

氷が解けた後手元にあったシンバルはすうっと消えた。

男は無残に地面に転がっている。

なぜかはわからないが窒息死という最悪な事態は免れた。

まあたとえ少しの負傷があったとしても私の個性の杖を使えばどうにかなっただろう。
引ける確率は8分の1だけど......。

「もうこんな時間だし帰ろっか」

少年に手を差し伸べた。

こんな時間に子供一人置いていくなんてこともできない。

時計台を見るとすでに午後23時を回っていた。

少年はわからないというような顔をしている。

「おうちまで送るよ」

「いい。お母さんに知らない人にはついていっちゃダメって言われた」

「それは...いいお母さんだね。でも夜中にお外に出ちゃダメ、とは言われてないのかい？」

「...言われた」

少年はしゅんと悲しそうな顔をして小さく「ごめんなさい」といった。

素直でいい子じゃないか。

子供の目線に合わせて屈む。

「どうして破っちゃったの？」

「嫌なことあった......お父さんやだ。おうち帰りたくない」

この年で反抗期とは...。
それほどお父さんが嫌なんだろう。

「でもお母さんは好きなんだよね？」

そう問えば少年はコクリと頷いた。

「君がおうちに帰らなかったらお母さん悲しくて泣いちゃうよ。それでもいいの？」

こんどはフルフルと首を横に振った。

「じゃあお姉さんと一緒に帰ろ？」

こんなセリフはじめて言ったなあ、とふと場違いなことを思った。

自分の子供、身うちでもない子にこんなこと言うなんてなんか変な感じだ。
まるで誘拐してるみたいな...、考えてて悲しくなるからやめよう。

少年は数秒時間を空けて「うん」と頷いた。

「A」

「？」

「私の名前。有栖川A。君は？」

「...轟焦凍」