年下の君が言うことを聞いてくれない【轟焦凍】 (ページ11)

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過去の話4 ページ11

「お姉さん、大丈夫？」

「え……、あっ…はい」

拝啓。お母さん、お父さん。
私は今、夢でも見ているのでしょうか。
目の前に広がる美しい氷の絶景。
氷たちは一つの像を形作っています。
その像はまるで生きた人間のようです。

……って現実逃避してる場合じゃない！

「お姉さん…？」

依然として男の子は不安そうにこちらを覗き込んでいた。

「あっ、えーと、ありがとう……？」

とりあえず礼を言っておく。

というかそれ以前に……、何が起こったんだ？
如何せん、頭の理解が追いつかない。

目の前には先程私を襲っていたハンマーの男が氷漬けにされていた。

ここでまず、え？と疑問になる。
私の個性はそのようなものではなかったはずだ。

あれ、違う……よな？
あれ、氷使えたっけ…？

「ギシン」

そう呼ぶとあの人形、ギシンがどこからともなく現れて「読ンだ？」とフレンドリーに聞いてきた。

「私の個性〈シノアリス〉って氷系使えたっけ？」

「〈シノアリス〉は火、水、草シカ使えナイのデス。氷はナイですネ」

「そっか、ありがとう」

となるとこの氷は私の個性じゃないから……、この男の子の個性ってことかな。

将来が末恐ろしい。

「えっと、とりあえず僕、大丈夫だった？」

「うん。僕は別に」

「この氷は僕の？」

「うん」

そうかそうか。

確か一般市民の個性使用って固く禁じられてたような……。

担任の先生がよく「街中で個性を使うのはダメだからねー」と口を酸っぱくして言っていた。

氷を溶かすには暖かいもの…炎か。

「ギシン、火の属性の武器って使える？」

「使えナイことモ無いデス。この紐ヲ引いテくだサイ」

ギシンの隣に紐ならぬロープが垂れ落ちてくる。

ロープは上空、空の彼方まで、肉眼では見えない所まで続いていた。
一体どこまで続いてるのだろう。

私はそのロープを思いっきり下へ引いた。

ロープに釣られるように上から何かが落っこちてくる。

ガシャーン

「残念残念ザンネンザンネン。今回は水属性ランクＡ、楽器デスネ」

……壊れかけの楽器音が聞こえたが気のせいだろう。

なるほど、私の個性は引いたものによってランダムに武器と属性が違うのか。

ちなみに引っ張り終わったロープはいつの間にか手の中から消えていた。

水属性か、私が欲しいのは火属性だから……。

「ギシンもう1回」

「無理無理無理。引いタ武器使い終ワルまで次ノガチャは引けナイ」