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でも俺はどうしても今日、Aのバイト先に行ってやらなければいけないことがある。
気持ちは沈むどころか、あと少し何かを注げば溢れ出してしまいそうなほど危うかったけど、
それでも俺はいつものキャバクラに向かった。
Aを手放すための、最後の一押しをするために。
「いらっしゃいませー」
「あ、どうも」
いつも入り口にいるこの男の顔ももう最後になるのかと思うとちょっと切なく思えたり。しないか。しないな。
バーカウンターの方を見れば、一人で黙々と準備をするAが見えた。
(......可愛いな)
いやいやいや、ダメだから。何考えてんの俺。
今日は、Aを手放すためにここに来たんだから。
「A」
「ご注文ですか?」
「注文と言えばまあ、注文かな」
平静を装って近づけば、Aも何事もなかったかのように対応してくる。さすがは賢いだけある。
いつもの丸椅子を引いて座れば、Aは注文を受けるために俺の方に近づいてきた。
.........ごめん、A。
俺のこと、許さなくていいから。
全部、無かったことにさせて。
「俺、もうここ来れなくなったから」
「え.......?」
「今日で最後」
一瞬、涼太によく似た黒い綺麗な目が泳ぐ。そりゃそうだ、昼間に俺がしたことだって忘れてるはずがないのに。
「ど、どうしてですか」
「ん?ああほら、別に怒られたわけじゃないんだけど」
「それ、偽物じゃないんです、か」
「そうだよ。生徒みんなに何にも言ってないし、本物って言って噂になったら困るなーって」
「...信頼されてなかったってことですか」
「いや、冷静に考えてみ?俺教師よ?高校生なんてまだ子供だから。
まあAはちょっと可愛いからってのはあったけどさ。ま、そういうことだから」
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るな(プロフ) - 対応ありがとうございます^ ^ (3月21日 12時) (レス) id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - るなさん» ありがとうございます。修正致しました。 (3月21日 12時) (レス) id: 63f20e3e12 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 34ページ主の名前変更ならないです。 (3月21日 10時) (レス) @page34 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - るなさん» るなさん、コメントありがとうございます。早くふたりがハッピーエンドを迎えられるようにわたしも願っております...!楽しみにしていただけたら嬉しいです。 (3月16日 6時) (レス) id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 相手の親キモすぎ。早く報われて欲しいです。間違ってでも保護者と一夜過ごしました。とか付き合いましたとかありきたりなのやめてほしい^ ^渡辺先生がんばれ (3月14日 12時) (レス) @page24 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯莉 | 作成日時:2024年2月23日 22時