21 ページ21
お兄ちゃんが私のために怒ってくれてるのは分かってる。
言わなきゃと思えば思うほど胸に何かがつっかえたような気持ちで、うまく言葉が出てこない。
「...っ、おにい、ちゃ」
「......A？」
気づいたら溢れ出した涙は、もう止められなかった。
「すきな、っひとが、いたの」
「......うん」
そう伝えたらお兄ちゃんは何も言わずに、私の背中をゆっくり撫でてくれた。
「あいにきて、くれてたの。キャバクラの、バーカウンター、」
絶対怒られるって分かってたけど、今はそれよりもつらい気持ちが上回って。
お兄ちゃんにただ縋りたい一心で心の内を吐き出せば、お兄ちゃんはため息をひとつついた。
「A、一回水飲もう、ね」
テーブルに置かれたコップの中身を少し飲めば、泣いて震えていた体が落ち着いてくる。
「もう少し詳しく話せそう？」
こんなことを黙っていても気遣ってくれるお兄ちゃんに頷いて、口を開く。
「もう会えないって、言われた...」
「...今日ってことか」
「......うん。急に、なにも、いわずに」
「急に？」
不思議そうな表情に、胸につっかえている苦しみを一気に吐き出す。
「...奥さんいるんだって」
自嘲気味につぶやけば、さっきの先生の顔が脳裏に浮かんだ。
なんにも思ってないような、いつもの余裕そうな顔。
「奥さんがいたのに、Aのところに来てたってわけか」
「最初は嘘だって言ってた。周りが噂してるだけだって。
でも、さっき急に、『やっぱ本物』って」
「その人はさ、Aのこと大切にしてくれた？」
「......わかんない、よ」
心では、そんなわけないと叫んでいた。
だって、私のことを大切に想ってたならあんなあっけない突き放し方、する？
デートしたときは「華奢でスタイルいいから」なんて言ったのに。
さっきは、「Aはちょっと可愛いからってのはあったけどさ」って。
「高校生なんてまだ子供だから」って。
どうでもよかったんですね、最初から。
考えれば考えるほど、自分ばっかり好きになってしまったことが胸に突き刺さる。
タイムリミットの３か月まではまだ、１か月弱あった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 485人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな(プロフ) - 対応ありがとうございます^ ^ (3月21日 12時) (
レス) id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - るなさん» ありがとうございます。修正致しました。 (3月21日 12時) (レス) id: 63f20e3e12 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 34ページ主の名前変更ならないです。 (3月21日 10時) (レス) @page34 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - るなさん» るなさん、コメントありがとうございます。早くふたりがハッピーエンドを迎えられるようにわたしも願っております...！楽しみにしていただけたら嬉しいです。 (3月16日 6時) (レス) id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 相手の親キモすぎ。早く報われて欲しいです。間違ってでも保護者と一夜過ごしました。とか付き合いましたとかありきたりなのやめてほしい^ ^渡辺先生がんばれ (3月14日 12時) (レス) @page24 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯莉 | 作成日時：2024年2月23日 22時
