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「しょっぴーいないの珍しー」
「な、いっつも寝てる奴に容赦なくデコピンするくらい元気なのに」
「まあしょっぴーも人間なんだし体調崩すくらいあるでしょ」
今日は先生がお休みらしく、6限の生物の授業は自習。
朝のHRで先生がお休みだと伝えられてから送ったメッセージは未読のまま。
「大丈夫ですか?」と打ちかけて、追加で送ったら迷惑かな、と思い画面を閉じる。
「......あ」
溜め込んでいた課題に取り掛かろうと教科書を開いたところで、ノートを置いてきてしまったことに気づいた。
出したつもりだったけど鞄の中に入れっぱなしだったかー......
キュッキュッと上履きと床が擦れ合う音を響かせながら廊下を進むと、教室の前に見慣れた人が。
「A、」
「...え」
最後の授業まで結局いなかったのに今ここにいることもそうだけれど、それ以前に廊下で名前を呼ばれたことに驚いた。
「先生、どうしたんですか?体調は」
「あー、それは全然問題ないんだけど」
「...?」
目をそらす先生を不自然に思って一歩近づけば、さりげなく距離を取られる。
「大丈夫、ですか?」
「や、大丈夫だから。ほんとに」
「...はい」
不思議に思いつつも先生をスルーして教室へ入った瞬間、
「っ?!」
背後のドアが勢いよく閉められた。
振り返ればすぐ後ろにいた先生の胸にぶつかり、後ろ手にドアを閉めたんだと理解する。
「せんせ、」
顔を上げたら、視界が塞がれて唇に柔らかいものが触れた。
下唇を甘噛みされて、体の力が抜けていく。
引き離そうと先生の体を押すけれどちっとも力が入らなくて。
しばらくしたら不意に唇が離れ、感情の読み取れない顔で見つめられる。
「......悪い」
悪い、って。
何の前触れもなく唐突にキスされた事実にだんだん頭が追いついてくる。
わざわざキスするためだけに教室に連れ込んだの?
私のことは遊びだから、なにしてもいいの?
「こういうこと、誰にでもしてるんですか」
「だったら何?」
即答だった。
だったら、やめてください。
私だけを見て。
そう言えたらどんなによかったことか。
今のキスで、気づいてしまった。
私、先生のことが好きなんだ。
「......私のことは、本当に遊びなんだなって」
「...お前、そういうこと二度と言うなよ」
沈黙に溶けた先生の声は震えていた。
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るな(プロフ) - 対応ありがとうございます^ ^ (3月21日 12時) (レス) id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - るなさん» ありがとうございます。修正致しました。 (3月21日 12時) (レス) id: 63f20e3e12 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 34ページ主の名前変更ならないです。 (3月21日 10時) (レス) @page34 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - るなさん» るなさん、コメントありがとうございます。早くふたりがハッピーエンドを迎えられるようにわたしも願っております...!楽しみにしていただけたら嬉しいです。 (3月16日 6時) (レス) id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 相手の親キモすぎ。早く報われて欲しいです。間違ってでも保護者と一夜過ごしました。とか付き合いましたとかありきたりなのやめてほしい^ ^渡辺先生がんばれ (3月14日 12時) (レス) @page24 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯莉 | 作成日時:2024年2月23日 22時