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「行ってくる」
「やだ、いかないで、」
「ちゃんと帰ってくるから。約束な」
「翔太......！」
行かないで。お願い、そばにいて。
必死に翔太の背中にまわした腕に力をこめても、やんわりと引きはがされる。
「......翔太」
「あー...そんな顔すんなって。これ、やるから」
「なに、これ」
行ってしまうのかと思いきや、翔太が渡してきたのはハートのかたちに折られた赤い折り紙。
「これはねー、Aが3歳の時に俺にくれたラブレター」
「っ？！なんでそんなもの持ってるの、てかなにラブレターって？！」
「ふははっ、いいだろ。俺が初めて騎士団の訓練に駆り出された時に、Aが行かないでーってぐずった時のやつ」
「恥ずかし...」
「......で、俺が怪我しないように一生懸命書いてくれたの」
翔太はわたしのてのひらの上で、そのハートを開く。
中に書いてあった文字は3歳らしく字体も並びもぐちゃぐちゃで、ぎりぎり読めるかどうかくらいの文章。
「これ、読めたの？」
「いーや。読めるわけねぇ笑」
「だ、だよね...」
「そう、だからさ、誰かさんが読んでくれるまで俺ずっと捨てられないのよ」
ちょっとだるそうで、でも面白がってる時の表情でわたしを見やってくる。これは、なにか意地悪をしたいときの顔......
「だからこれ、後で俺に返してくんね？」
「後で、って」
「全部終わったら、Aのこと絶対迎えに行くから。
だからお前は、俺が帰ってきたときにこれ、返せるように持ってて」
「.........翔太のばか」
「は？」
「そんなの、行ってらっしゃいって、言うしかないじゃん......」
「当たり前だろ。言わせてんだから」
もう一度翔太の腕が背中にまわされて、さっきよりも強く抱きしめられた。
「ね。俺、帰ってくるから」
「...うん」
「絶対約束する。Aのこと一人じゃ放っておけねーし」
「...うん」
「だから、ちょっとだけ待ってて」
そして今度こそ翔太はわたしから身体を離して、大広間の扉を開ける。
「またね、A」
「...いってらっしゃい、翔太」
抑えきれなかったものが溢れてきて、視界が歪む。
翔太が出て行った後には、静かに涙を流すわたしだけが残された。
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灯莉(プロフ) - 雪姫さん» 雪姫さん、ありがとうございます！作品にコメントをいただくのは初めてなのでとても嬉しいです。おおかみこどもの雨と雪、いいお話ですよね。そう言っていただけて光栄です...！全メンバー書く予定なのでぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。 (3月7日 22時) (
レス) id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
雪姫 - めっちゃ良かったです。舘様のドラキュラ、阿部ちゃんの狼男、ひーくんの蛇神どれも良い話しでした。けど、狼男では、アニメのおおかみこどもの雨と雪、あれを、亮平君と重ね合わせ合わせて読んでしまうくらい感動しまって。もっと続きが知りたいです。待ってます。 (3月7日 18時) (レス) id: 2fedfb09fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯莉 | 作成日時：2024年2月17日 16時
