蛇神 × 生贄の娘【黄】 ページ20
「今年は、もう......」
「そうですね.........」
足音を立てないようにそっと壁から離れ、一目散に部屋へと戻る。
(......わたしの、番だ)
この村は、蛇神様によって守られている。
山奥には村の大きさにはとても似つかわしくない神社の本殿があって、そこに蛇神様はまつられている。
うちの社はその神社の傘下のひとつで、わたしも巫女として日々業務をこなしていた。
この村はその蛇神様のおかげで毎年お米や野菜がたくさん採れるものの、山奥の秘境にある村だからよそと関わり合いになることもなく平和な暮らしが営まれている。
となると、そんな村の平和を守っている神社の一人娘となれば周囲からの賞賛も溢れんばかりだろうと思うだろう。
けれど、わたしはうちの敷地から外に出たことがない。
小高い丘に建っているから村の景色は毎日のように見ている。
一緒に走り回って遊ぶ子供達や、七輪で魚を焼きながら赤子の世話をするお母さん。
羨まなかった時なんてひと時たりともない。
この神社に生まれる女は、蛇神様の生贄として育てられるのだ。
代々受け継いでいる神主の男と村から選ばれた成人前の女性に子供を産ませ、男児であれば跡継ぎにして女児は外に出さず育てる。
結果がどうであれ、母親となった女性はすぐに殺される。
もちろん、いつも生贄が必要なわけではない。むしろ生贄として差し出されるのは何十年に一度。
飢饉や大災害が起こったときだけ。
いつも村を守ってくださる蛇神様は数十年に一度、祟り神に姿を変える。
村が大きな災禍に襲われたとき、蛇神様の怒りを鎮めるためにこの神社の中で育ってきた神聖な娘を捧げるのがこの村にひそかに伝わる伝統なのだ。
今年は大雨と土砂崩れで畑がことごとくだめになり、生活が立ち行かなくなる村人がたくさんいるらしい。
だから娘は本殿へと送ろう、神主である父と村長のお爺さんがそう話し合っているのを盗み聞きしてしまった。
基本的に、生贄となった娘が生還した例はない。そりゃあそうだろう。
気まぐれで村を壊すような人ならざる者のもとに送られるんだから。
まあ、たとえ生贄でもこの神社から出られるなら、いいのかもしれない。
布団を頭までかぶりながら、全身に走る傷跡を静かに撫でた。
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灯莉(プロフ) - 雪姫さん» 雪姫さん、ありがとうございます！作品にコメントをいただくのは初めてなのでとても嬉しいです。おおかみこどもの雨と雪、いいお話ですよね。そう言っていただけて光栄です...！全メンバー書く予定なのでぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。 (3月7日 22時) (
レス) id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
雪姫 - めっちゃ良かったです。舘様のドラキュラ、阿部ちゃんの狼男、ひーくんの蛇神どれも良い話しでした。けど、狼男では、アニメのおおかみこどもの雨と雪、あれを、亮平君と重ね合わせ合わせて読んでしまうくらい感動しまって。もっと続きが知りたいです。待ってます。 (3月7日 18時) (レス) id: 2fedfb09fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯莉 | 作成日時：2024年2月17日 16時
