新入生歓迎！【兎佐伎翔緒】 ページ6
部活はおれ、
何の…って言われたら、ちょっと答えられないけど。行動と気持ち、考えも、全部。演技に、演劇に注ぎ込んできたおれが、”今”全力を出せるのは、ここ、義ノ浦学園演劇部。
来年からは高校生。気は早いけど、もう下には二学年も後輩がいる。そして今日は、新一年生が演劇部に仮入部に来る日。
「こんな絶好のチャンス、このとびおちゃんが逃すわけないじゃん！」
教室のど真ん中で聞いていたヘッドフォンを引っぺがして叫ぶ。…やっちゃった。
ちょーっとばかし感情に正直なおれは、まあなんというか、唐突に叫んだり、静かになったりするわけで。もう三年も一緒に居てくれてるクラスメイト達は、「またとびおが馬鹿やってるよ…」って苦笑いしながら手荷物を片付けていた。うんうん、気遣いってたまに心に刺さるよね。正直ここは、ドッ！！って笑って欲しかったもん。
そんなことを考えてるうちに、帰りのホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。一斉に教室から飛び出していくのは、運動部のやつら。サッカーボールひっさげた、明らかな体育会系の輩が「オレが一番乗り〜！」と校庭で叫ぶ声が聞こえた。
おれはいつもと同じように、ちょっと遅めに教室を出る。果汁100％の桃ジュースと、じゃらじゃらキーホルダーを付けまくった学校規定のバック。それと、次の公演用の台本片手に歩き出す。いざ、部室棟へ！
「んーと、おれの役はここで下手にはけるから、…うわ、次上手からか。舞台裏めっちゃ走らなきゃ。ここの舞台広いんだよなぁ…」
ぶつぶつといつもの癖で呟いていると、ヘッドフォンの外がなんだか騒がしい。演劇部には学園三大美女、とか漫画みたいなのもいるから、多分それのファンクラブかな〜なんてぼんやり考えながら、「ちょっとごめんね〜！通して〜！」なんてわざとらしく言って人込みをかき分けた。
思ったよりも人が集まってるみたいでちょっと嬉しい。…まあ、見た目なら綺麗な人揃いだし、おれだって負けてないとは思うから、惹かれるのは分かるんだけどね。
「…？」
部室の手前で固まっている黒髪の女の子。…後輩かな？もしかして入部希望！？
今のうちに確保しとかなきゃ。そう思って、その女の子に声をかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
