少女の願い事【赤髪の白雪姫】 (ページ33)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:70,263 hit

31個目 sideなしページ33

「ゼン殿下、馬車の用意が整いました」

ハルカ侯爵のお小言が終わる前に馬車の用意が整ったようだ。

「では、道中よろしく頼むハルカ侯」

「はっ」

渋い顔をしながら、ハルカ侯爵にそう言ったゼン。ハルカ侯爵もそれに返事をした。

「オビ A しっかりやれよ」

「ええ」

「頑張ります」

ミツヒデがオビとAに話しかけている中、白雪はゼンに声をかけた。

「ーあの、ゼン王子。何か…今持っている物でタンバルンに借りていっていい物はないですか。あ、ピンとかボタンとか」

「ボタン？…時計でもいいのか？」

突然の事で少し悩んだゼンだったが、懐から時計を取り出し、白雪に差し出す。

「！はい！帰ってきたらお返しします」

ゼンから時計を受け取った白雪は嬉しそうに笑ってそう言った。その顔を見てゼンもふわりと笑う。

「それでは…！」

白雪が横に目線を向けると、そこにはイザナ王子が柱に寄りかかって立っていた。

「兄上！」

「気にするな。ただの見送りだ」

「第一王子…」

いつの間に馬に乗っていたオビがポツリと声を漏らす。その隣にいるAも声こそ出さないが、イザナ王子をじっと見ていた。
白雪とイザナ王子の目が合う。白雪はぺこりと頭を下げると馬車に向かった。

「では、ゼン王子、木々さん、ミツヒデさん。行ってまいります」

「ーああ！」

こうして、白雪、オビ、Aはタンバルンへと旅立って行った。