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その人物はAの方へゆらりと向く。

「おまえ、名をなんという」

「失礼致しました。お初にお目にかかります。私、クラリネス第2王子付伝令役のAと申します」

Aは胸に手を当てお辞儀をした。

「そうか、私はハルカという。国境近くまで同行させてもらうが、よろしく頼む」

「そうでしたか。よろしくお願い致します」

ハルカ侯爵はそう言うと今度は白雪の方へと視線を向ける。白雪は相変わらず、驚いた顔をしていた。

「…私が同行する事に何か言いたいことがある顔だな娘」

「い、いえ!そんなことは!」

白雪は慌てて立ち上がりぶんぶんと首を左右に振る。そこへタイミングが良いのか、悪いのか、オビが荷物を置いて戻ってきた。

「お嬢さんどうかし…たっ…」

「!!お前!」

オビはハルカ侯爵を見た時、一瞬たじろいだもののすぐに体勢を変えAの隣に立ち挨拶をした。

「失礼致しましたハルカ侯爵どの。お久しぶりです」

ハルカ侯爵は少し沈黙するとため息をつき、オビに話しかけた。

「…ゼン殿下の伝令役をしているそうだな」

「は。ご存知で…」

「殿下から聞いている。タンバルンへは殿下の側近が2人付くそうだが…まさかお前達か」

「はい」

「そうですが」

そう答えた瞬間4人の空気がピシッと固まる。白雪は元標的、オビは元雇われ刺客、そしてハルカ侯爵は元オビの雇い主である。うっすらとではあるが事情を聞いていたAは数歩後ろへ下がる。そこへタイミングよくゼンがやって来た。

「ああ、揃ってるな。白雪 オビ A ハルカ侯。見送りに来たぞ」

「ゼン殿下!少々お時間よろしいか」

「よろしいが?」

ハルカ侯爵はゼンの姿が見えた瞬間、大きな声を出しゼンに話しかけた。こうなるとゼンも分かっていたようですぐに返事をする。

「侯爵も国境近くまで同行して下さるそうです」

ハルカ侯爵がゼンの近くに行ったので、白雪はオビにそう言った。

「げっそうなの!?じゃ8日間くらいは一緒って事!?」

「そういう事になりますね」

オビは白雪の言葉を聞き驚きを隠せないようで後ろに少し仰け反る。Aは少し遠い目をしながらオビに同意をした。今のような空気を私は変えられるのだろうかとAは少し悩んでいた。

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作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時

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