1つ目 sideオビ ページ3
「あっちゃー。これは帰るのが遅くなっちゃったな…」
森の中夕焼けに照らされてボソリと呟く黒髪の男性。
「主に怒られるなぁこれ。お説教が長くなきゃいいけど」
黒髪の男性ーオビはガシガシと頭を掻いて足を進める。
今日オビは主であるゼンに1日だけ暇を貰い遠くの街まで足を伸ばしていたのだ。しかし、街を出るのが少し遅かったのか、森に入る頃には太陽が沈み始めた時だった。
少しでも早く帰れるように早足で進む。その時ガサリと近くで音がした。前にやっていた暗殺業のせいなのか思わず神経を尖らせるオビ。しかし、その後音が何も聞こえなくなった。
オビは不思議に思い音の方へ近づいてみる。そこにはもぞもぞと動く何かが合った。布を被っていたが、オビは呼吸の音、身体の大きさから直感で人間の女の子だとわかった。息が上がってるのか肩が上下に動いていた。
「あー、君?こんな所で何やってるの?危ないよ?」
ここまで来て無視する訳にもいかず肩を叩き声を掛ける。いきなりで驚いたのかばっとこちらを振り向くその子。さすがにオビと驚きピクリと体を震わす。
「大丈夫かい?もう夜になるからここら辺からは離れた方がいいよ」
オビがもう一度言葉をかけるもののその声が聞こえているのか分からないほど体が震えていた。
「どうしたんだい?迷子になったのなら送っていこうか?」
帰る場所…?と小さな声で呟く少女。
「帰る場所なんて…ありません」
「え…」
「私に…帰る場所な、んて…」
そう言ってる途中で少女は気を失ってしまったらしくふらりと後ろに倒れそうになる。
片手でその体を支えると被っていた布が頭からずり落ちた。そこから現れた少女の顔を見てオビは思わず息を呑む。
端正な顔立ちをしているのに頬がこけているのが少しに気になったが、もっと気になるのが先程言っていた帰る場所がないという事だった。
少女が言った事が本当ならこの子はどうすればいいのか。悩む事もなくオビの中でもう答えは出ていた。
「しょうがないよね」
オビは少女を抱き上げると城へと急いだ。
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作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時