遅咲きのゆー−Ryohei− ページ10
初めて会った時は、優しそうな人だと思った。
次に会った時は、優しい人だと理解した。
その次の時は、頭のいい人だとわかった。
その次には、可愛いお兄さんだと笑った。
そして今、
その優しくて可愛いお兄さんは、私をラッコ抱きにして頭に頬擦りを繰り返している。
「りょーへーさーん」
「うん」
「何かあった?」と聞こうと思って止めた。
年下の私に言えない事も多いだろうな…と思うから。
それでもこうやって閉じ込めて離さないというのは、落ち込むことがあって癒しを求めてくれているんだと思う。
勝手な解釈の自覚もある。
普段は誰にでも口に出してしまう言葉を飲み込んで、的外れなことを訊ねた。
「眠いの?」
「んー……そうかも。最近ハードだったしね」
「じゃあ寝よ?」
掌を半分まで隠してしまう、少し長めの亮平さんの袖を軽く二度引いて促せば、疲れなのか、少しだけ陰の見えた笑顔の質がふにゃりと変わる。
あざといと分かっていても上目遣いを添えることを忘れてはいけない。
「いちこは可愛くて優しいなー」
弾むような声に変わったことを確認して、ひとまず、と気持ちが上を向いた。
ぎゅうぎゅう抱き締めてくる私よりずっと逞しい腕に指を添える。
「りょーへーさーん?」
「ん?」
「…大好きです」
「俺も、いちこが大好きです」
身を捩って視線を合わせて告げた告白に、額を合わせての笑顔と、あまぁい告白が降ってくる。
嬉しくなってむふふと笑えば、また「可愛い」の言葉が雨のように。
「いちこ?」
「はーい」
「ちょっとだけ、…甘やかして」
気恥ずかしいのだろう、視界から顔を隠すために私の頭頂に顎先を乗せた亮平さんがか細く呟いた。
強く抱き締められて身動きが取れないから、とりあえず目の前の亮平さんの胸に顔を埋めた。
「甘えて…いーよ?」
普段さんざん甘やかされてる私だから上手くやれるかは分からないけれど、それでも亮平さんの望みは何でも叶えてあげたい。
「ありがとう」
「うん、んっ」
突然触れ合う唇に目を丸くした後、私は膝の上に乗せられたサラサラの髪を玩んだ。
自然と笑みが溢れるのは“幸せ”だと噛み締めるからであって、
、
決して亮平さんが私のひざこぞうを徒に撫でるせいではないと明記しておく。
よめ。−Daisuke−→←天邪鬼を許して?−Tatsuya−
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作者名:Fin. | 作成日時:2019年7月15日 23時