Jewelry−Juri− ページ6
私は昔から青いものが好きだった。
キラキラしているものも大好きで、樹のカラーが青になったことも運命だと思った。
「よ。待たせた」
「大丈夫、さっき着いたばっかだから」
大好きな樹は待ち合わせに遅れる事はよくあること。
まず仕事に遅刻することもあったのだから、それは3年の付き合いで諦めたと言うのが正しい。
いや、それも間違ってるかな。
許してしまうのは惚れた弱味なのです。
「いくぞ、いちこ」
「うん!」
ごく自然に差し出された掌を重ねれば、樹の優しさとよく似た温度を保つ大きな手が私の手を包んでくれる。
どこにでもある普通の大きさ、太さの私の手を、樹は綺麗と言ってくれる。
それが嬉しくてたまらなかった。
「そう言えば、ね、前に樹がいいなって言ってたジャケット買えたの!プレゼント♪」
「え?マジ?サンキューいちこ!」
「ちょ!街中だから!」
喜びの余り抱き付いて来た樹の腕にぎゅうぎゅうと絡まれて、一応の注意をすれば気恥ずかしそうに「わりぃ」と頬を掻いた。
プレゼントを嬉しそうに手にして、改めて私の手を包む。
その腕にちらりと視線を注いでしまうのは仕方ないことだと思うの。
そして、
(もう少し強く抱きしめてくれても良かったのに…)
なんて僅かの不満が顔を覗かせる。
そんな少しばかり黒い感情を振りほどくように樹の腕に体を寄せた。
「歩きにくいって」
「久しぶりなんだからもっとくっついてたいの!」
「しょうがねーな」とでも言いたげに優しく苦笑する樹に頬を擦りつけて、繋いだ大きな掌に向けて少しだけ力を込めた。
「メシ行くか」
「うんっ!」
「何がいい?」
「うーん、焼肉じゃないならどこでもいいよー」
「どこでもいいと言いながら俺の唯一の選択肢を潰してくる件について話し合わね?」
「なんのことでしょーねー?」
「こんにゃろ」
「あはは!」
少しだけじゃれあって、結局は焼肉。
樹と一緒なら何でもいいし、どこでもいいの。
デートコースとしては赤点どころか一発落第の選択肢だけれど、それを樹が回答するならどんな答えでも大当たり。
強く、けれど優しく私の手を引いた樹に連れられた私は、その掌に思いを馳せた。
いつか、優しい樹のこの掌で
私の身体を樹の“愛の証”で“飾って”。
沢山の人に気付いてもらえるように、
輝かしく、くっきりと…。
そう、私の大好きな樹の“青”の証を、
まるでアクセサリーのように…。
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作者名:Fin. | 作成日時:2019年7月15日 23時