Everyday (ページ13)

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息吹ーRyotaーページ13

お互いに特に思うことはなくて、それでも始まったお付き合いは、私にとって初めてだった。

「宮舘です」

「ど、どうも…さとういちこです…」

ごくごく一般的で、どこにでも居そうなTHE･平均値の私に、とても刺激的な恋文が届くようになって早一月。
イタズラだとシカトしようとした私よりも、４歳上の兄の方が過敏に反応を示し、ボディーガードならぬ偽彼氏を用意するレベルでうちの兄はシスコンです。
そんな無視さえしておけばなんてことない案件に巻き込まれてしまった可哀想なお方がこちら、宮舘涼太さん。
なんと、アイドル予備軍らしい。

「仕事がない日は迎えに行くから」

「えっと…友達と帰るので…お気になさらず…」

「恋人を心配するのは普通だと思うんだけど…」

そういうものですか…。
高校生の迎えがある時点で色々詮索されそうなのに、それがアイドル予備軍だなんて、至極めんどくさい。
十人並みの自分にとって、熱烈な恋文の主よりも中学の同級生の方がめんどくさい。
高校生、という所に突っ込まれるならまだしも、もし芸能人という所に突っ込まれたら私はなんと返答するのが正解か。
お兄ちゃん、マニュアルプリーズ。

「あ…」

「お帰り」

ぎこちなく声をあげた私に構わず、するりと右手を掬い上げたのは校門で待っていた宮舘さん。
伝わってくる温度は思っていたよりも温かくて、気恥ずかしさであちらこちらに視線が泳ぐ。

「いちこ？」

「な、なんでもありません！」

「ふふっ、敬語はなしって言っただろ」

「ぅ…はい…すみません…」

「ん？」

「うぅ…」

「しょうがないな、ゆっくりでいいよ」

子供を宥めるように２度、私の頭を宮舘さんの右手が撫でた。
周りの視線が気になって、その場を急いで離れようと繋がれた右手を引っぱれば、

「ゆっくり歩こう」

などとマイペースな一言とともに後ろへと手を引かれる。
異性と手を繋いで歩くなんて初めてで、ドキドキと早鐘を打つ音が耳の奥から聞こえて、顔が熱くなった。
すれ違う人とぶつかりそうになれば、強く引かれて広い胸に収まる形になり、あまりの近さに赤面した私を見下ろした宮舘さんは目を細めて笑った。

「危ないから、もう少し近くにおいで」

耳元より少しだけ上から聞こえた低い声に、肩を跳ねさせて飛び退いた。

「可愛いね」

その言葉と柔らかな微笑みに、耳の先まであっつくなった。

このドキドキは、ぜんぶ“はじめて”のせい。