よめ。−Daisuke− ページ11
やっちゃった…。
『私と嫁どっちが好きなの！？』
そんなの、答えなんて分かりきってる。
、
、
嫁だよ！！！！！
私だって嫁大好きだからね！！！
ヲタクなのは一緒ですからね！！
理解してますよ！
でも、少しくらい外でデートしたい女心を察して欲しい。
あっちの方が歳上なのに、何でわかってくれないの…。
本当に些細なことだった。
一緒にアニメを観て、なかなかおもしろいね！なんて笑って、少しの不満を抱えながらも大ちゃんと一緒に過ごす時間は悪くなくて…。
でも、タイミングが良くなかった。
それ以外、ない。
“大ちゃんは私とアニメ、どっち好きなのかな？”
そんなことがふと頭を過った。
「やっぱりこの子が１番可愛いよなー！オレこの子好きだわー」
ぷちん。
語尾に♡やら♪やら乱舞させてそうな弾んだ声でそう宣ったあヤツに、勢いで吐き出したのが冒頭のアレ。
そして勢いのままに大ちゃんの部屋を飛び出して、今に至る。
後悔しかない。
きっと今頃、意味の分からない私に首を傾げた後で可愛いあの子をまた眺めているのだろう。
目を細めた幸せそうな顔で。
「あぁ…凹むぅ〜」
私も嫁に慰めてもらおう。
TVに映し出された私の嫁は、私が１番可愛いって言ってくれて、とろりととろけた笑顔をこちらに向けて手を伸ばす。
『泣き顔も綺麗だよ。…ただ、次は笑ってくれるかい』
本来なら触れるはずもない手が私の頬を撫でている。
脳内変換したはずの、大ちゃんの声で再生されたそのセリフが後方上部から聞こえて、
「見つけた。僕のプリンセス…」
今のシーンにはない嫁のセリフとともに、滂沱の滝となっていた私の頬をその舌がなぞった。
ひとしきり大ちゃんに抱き締められたまま泣いて、繰り返した「ごめんなさい」を大ちゃんは受け取らず、頼り甲斐さえ感じる太い腕と広い胸が私の小さいヤキモチを閉じ込めていた。
「…いちこがあんなこと言うなんて思わなかったわ」
私もあんな「仕事と私どっちが大事なの」みたいなこと言うなんて思ってませんでしたし。
ぐしゃぐしゃになった顔を両手で挟んできて、見つめあった大ちゃんは真顔だった。
「いちこも大好きなオレの嫁だよ」
また溢れそうになる涙を唇を噛んで堪えて、大ちゃんの顔に手を添えて、
「大ちゃん…
“も”ってなに！？」
頬をつねった。
「言い間違いでやんす！」
「もう知らない！」
でも…大好き。
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年7月15日 23時
