Everyday (ページ2)

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褐色クローバー－Jesse－ページ2

「お待たせ♪」

「おっせーよ、いちこ」

「まだ１０分前ですー」

「俺もっと前に来てたぜ！」

「珍し、それで？何で今日は早いの？」

「HAHAHA！緊張して寝れなかった！」

いつものクセのある豪快な声で笑い飛ばしたジェスに抱いた素朴な疑問。
訊いてみよう。

「何度もデートしてんのに緊張すんの？」

「いや、今日は…いや！なんでもねー！」

お、言いかけて気づいたか。
チッと舌打ちを１つ落としてやったら、大きい手で顔を挟まれた。

「ひゃにふんお」

「AHAHAHA！！おもしれー顔！」

「ふぁぃほー！？」

「なに言ってるんですかー？」

ゲラゲラ笑うがお主の手には私のファンデーションがベッタリだよ？
化粧直しの時間を寄越せ！と言う意味で弁慶さんを軽く小突いてやった(“私にとって”の軽くだけど)。

「いっでー！！いちこ！いてぇよ！！」

「はいはい。行くよー」

「なぁ！自分のこと分かって！？」

「軽くだよ。軽く」

「いちこの軽くは俺の全力の１０分の９！」

「そこまでは行かないよ。５分の４だよ」

「８割！」

「行かないのー？」

「行くけどさ…」

腑に落ちないと言わんばかりの顔に、少しばかりサービスしてやろうか、と袖を摘まんでちょっとだけ引く。

「ジェス…行こ？」

「行くか」

小首を傾げての上目遣い。
効果はバツグンだ！
大きな掌で私の手を引いて、車道側を歩いてくれる。
ジェスよりも私の方が力が強いのに、それでも女の子扱いしてくれて、触れる時も壊れ物に触れるようにそっと。
そんな異性は居なかったから、とても擽ったい。

「いちこ」

低く掠れた声で発される私の名前。
名前まで大事にしてくれているのを感じさせてくれる柔らかな表情に、幾度となく惚れ直している。
ねぇ、あと何回惚れればいいの？なんてバカバカしい問いまで生まれてくるあたり、私の頭も大分ハッピーらしい。

「ラッコ可愛いー♡」

「アイツ貝わってる！」

「え！？見えない！」

「ほら！」

軽々私を抱き上げて、恥ずかしげもなくはしゃぐ無邪気なところや周囲に気づいて慌てるところも好きだと思う。
好きなところは数えきれないくらいあって、

「いちこ」

こういう真剣な顔も魅力的。
綺麗な夜景の見える公園で、突然手を引かれた。

「一緒に住もう」

言いながらジェスの手には小さな箱。
中には赤い宝石を嵌め込んだ指輪が鎮座していて、言葉の意味を飲み込むのに少し時間を要した。
答えなんか１つ。

薬指に幸せの赤が輝いた。