MISSING TWINs Ⅲ (ページ16)

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ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅣ ページ16

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その日、私は生きたまま死んだ。
泣き晴らした目元にまた涙を浮かべるお母さんと、真っ赤な目をしたお父さん。
何の感情も表さずに、一言も発さない大我くんに見守られて私から様々な機械が外されていく。

「お嬢さんの免許証に臓器提供の意志が記されていました。ですが、どちらを提供するとの明記がありません。…いかが致しますか？」

ー…そっか…それで、あの時大我くんはあんなこと言ってたんだ…ー

両親の判断により、幾つかの部位の提供が決定した。
嵐が過ぎ去った、雲１つ無い晴天の日の出来事だった。

「今晩、泊まっても良いですか？」

「分かりました。宿泊許可を出しておきます」

申し訳なさそうな顔をした医師は、申し出を断る事なく簡単に許可を出した。
本来なら夫婦となっていたはずの人間を、まだ他人だとは断ぜなかったのだろう。
その判断によって起きる事など、私と大我くん以外は知らない。
口を噤んだ大我くんと、言葉を伝えられない私ではこの後を回避する事など不可能だった。

消灯を過ぎた後も、大我くんはずっとそこに居た。
誰も来ない病室で、無表情にはらはらと涙を落とし続けていた。
夢に見ていたあの時、私はずっと謝っていた。
その気持ちは今でもあるのに、一言を紡ぐ事が出来ずにいた。

「誰にも渡したくない」

ーうん、知ってるー

これから貴方がしようとしている事も。
私に乗り上げて首を絞める大我くんの背中を見つめながら、そっと傍らの鞄へと手を伸ばした。

ー今の私なら…ー

ナースコールを鳴らす事が出来た。
子供達に混ざって、物を動かしてみたりと沢山のイタズラもした。
相変わらず嫌な気配の鞄の中から、ナイフを抜き去ってしまえば、そうしたら、大我くんは死ねない。
ぐっと丹田に力を込めて、集中したまま、物音をたてぬように鞄を開く事が出来た。
少し、疲れたけれど休んでなどいられない。

ー死なせないからー

瞼を伏せてゆっくり深呼吸をし、再び気合いを入れて鞄の中へと手を忍び込ませた。